2017年に行われた第２世代へのフルモデルチェンジ以来、初の大規模なフェイスリフトとなったアウディのA5／S5シリーズ。今回試乗に選んだS5スポーツバックは変更範囲が控えめ。アルミ調インサートを備えたハニカムグリルや新デザインのアルミホイールといった外観面に加え、専用のブラックグラスルックコンソールパネルやダイヤモンドステッチのSスポーツシートなどが採用されているが、最高出力354馬力を発生する３リッターV型６気筒・直噴ターボエンジンと８速ティプトロニックトランスミッションとの組み合わせは従来通り。

このように書くと、「代わり映えしないのでは？」と思う方もいるかも知れないが、いざ走らせてみると、そんな懸念はキレイさっぱり解消されるハズ。豊かなトルク特性、シームレスな変速フィール、しなやかな乗り味を生み出す新採用のダンピングコントロールSスポーツサスペンションなど、トータルバランスの高さは前モデル譲り。代わり映えしないのではなく、すでに円熟の域に達している、というのが正しい見方ではないだろうか。

キャリーオーバー路線のS5シリーズに対し、A5シリーズは変更部分が多岐に及ぶ。中でも最大のトピックスと言えるのが、同シリーズ初となる２リッター直噴ターボディーゼルエンジンの採用。A5スポーツバックには163馬力の35TDI、190馬力の40TDIという２機種が、２ドアクーペのA5には40TDIと、249馬力の45TDIという２機種を設定。このうち前輪駆動モデルはA5スポーツバックの35TDIのみで、他はすべて４輪駆動のクワトロとなる。また、45TFSI（ガソリンエンジン）と35TDIにはマイルドハイブリッドシステムも新たに装備。コースティング（アクセルを踏まない惰力走行状態）時にはエンジンを完全停止させることで、燃料消費が抑えられている。その他、歩行者検知機能付きアウディプレゼンスシティや、渋滞追従機能付きアダプティブクルーズコントロールを標準装備。安全性や快適性といった点についても、さらなる充実化が図られている。

ヨーロッパとは異なり、日本でディーゼルエンジンといえば、まだまだSUVやワゴンといった車種向けのモノというイメージが強い感もあるが、スタイリッシュなクーペボディとディーゼルとの組み合わせがどのように受け入れられるか。アウディのチャレンジングな取り組みに、大いに注目したい。