ドイツ本国ではひと足先、昨年春にデビューを果たしており、まさに今回待望の国内導入開始となった新型A3。リアハッチゲートを備えたSportbackと３ボックスのSedanという構成は先代モデルと同様。スタイルについても基本的にキープコンセプト路線で、チラ見程度ではドラスティックな違いは感じられず、文字通り「正常進化」という印象を受ける。しかし、改めてじっくりディテールを見直してみると、よりワイドになったフロントグリルや抑揚に富んだサイドセクションなど、コンパクトという枠組みに捉われない堂々たるデザインに仕立てられていることに気づく。ちなみにボディサイズは先代A3 Sportbackに対し全長で20mm（A3 Sedanは30mm）、全幅30mm（同20mm）のサイズアップ。ホイールベースに変更は無いが、ヘッドクリアランスをはじめ室内空間には若干の余裕がプラスされている。

新型A3のラインナップは１リッター３気筒ターボエンジンを搭載する30TFSI、２リッター４気筒ターボの40TFSI、そしてよりハイパワー志向に仕立てた２リッター４気筒ターボのS3の３タイプ。駆動方式は30TFSIのみがFFで、その他はクワトロ（AWD）となる。このうち、主力モデルと目されているのが30TFSI。１リッター３気筒ターボは基本ユニットこそ弟分のA1と同様ながら高圧縮仕様となっている他、ベルト駆動式オルタネータースターターと48Vリチウムイオンバッテリーを用いたマイルドハイブリッドドライブシステムが新採用されたことも注目のポイント。グレードは近年のアウディの流儀に則ったシンプルなもので、ベース、アドバンスト、Sラインという３種類。このうち、今回取材用にAudi福岡マリーナから借り出したのは、30TFSIのSライン。シフトレバー、ではなく小型のシフトスイッチをDレンジにクリックし、初夏のマリナ通りへとA3 Sportbackを乗り入れた。

先代A3は1.4リッターと1.8リッター（のちに２リッターを追加）という設定だったこともあり、１リッターを主力に据えた今回のフルモデルチェンジは正直「どうなの？」という懸念もあったが、アクセルを軽く踏み込んだ瞬間、そんな心配は全くの取り越し苦労だったことを痛感。モーターアシストの効果は絶大で、走りはパワフルという表現を使用しても差し支えないほどの力強さ。1.5リッター、あるいはそれ以上の排気量クラスにも匹敵する活発なレスポンスには正直、ビックリ（撮影用にクルマを止めてまず行なったのは、ボンネットを開けて「ひょっとして、間違って２リッター車を借りたのかも？」という確認だった）。アイドリングストップ状態からの復帰も極めてスムースで、７速Ｓトロニックとの相性もバツグン。コンパクトらしい軽快な身のこなしと、Audiシリーズに通じる洗練された上質さを兼ね備えた仕上がりは、幅広い世代に受け入れられるはずだ。最後に蛇足のお話を。販売計画上のメインはA3 Sportbackとなっているようだが、筆者的にはA3 Sedanに一票を投じたい。オーソドックスながらクリーンな３ボックススタイルは昨今では逆に新鮮で、Sportback以上にシーンを選ばない相棒となってくれると思う。果たして、アナタはどちらがお好みか？是非、Audi福岡マリーナのショールームでじっくりと見比べて頂きたい。