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至極の味と技を満喫する、福岡の鮨の名店3軒|食の専門サイト”UMAGA”セレクト

公開日

muto編集部

福岡のうまいものを探求するWEBマガジン「UMAGA」は、福岡のグルメたちを唸らせる記事が毎日更新されています。その中から、muto読者にオススメの情報をセレクトして定期的にお伝えします。今回は、今、福岡が誇る鮨店3軒です。予約なかなか取れませんが、一度はお試しください。

半年待ちは当たり前。国内外で名を馳せる、春日市発の寿司の名店 ”菊鮨”

福岡県春日市に暖簾を掲げる「菊鮨」を、福岡屈指の寿司屋に挙げる人は多いでしょう。始まりは、1988年に父が興した町寿司を、2012年に瀬口祐介さんが継いだこと。当時29歳だった俊英は、たちまちこの郊外店を半年以上予約が取れない人気店に刷新します。

それ以降の躍進ぶりも目覚ましいばかり。国内外から訪れる寿司マニアを驚喜させ、2019年度のミシュランガイドでは一つ星を獲得……と、いまや福岡グルメを牽引し、活気を吹き込む名店の一つです。

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さっそく10席のカウンターに腰掛け、つまみ7~8品、握り12貫を含む「おまかせコース」(24,200円)を待ちます。現在は11時30分、14時、18時のスタートで、予約は14時の回が狙い目だそうですよ。

コースには全国から届く約20種の厳選鮮魚が用いられ、桃源郷のごとき極上の旬を咲かせます。もちろん主役は握りですが、前半を担うつまみも珠玉そのもの。確かな技巧で奏でる序曲は客を高ぶらせるに十分です。

例えば、わずかな火入れで望外の甘味を引きだす天然車海老。加熱後に生じる歯応えは残しつつ、限りなく“ナマ”に仕上げた身は妖艶そのものです。爽やかな酢のゼリーを乗せ、相性の良いホタテと共に楽しみました。

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同様に、唐津産のウニとアワビもため息もの。5時間以上も酒で蒸したアワビには「小品でさえも妥協せず」との気合いを感じます。さりげない贅沢を秘めた味はふくよかで、これらをアテに一献傾ける幸せといったらありません!

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こうして膨らむ高揚感は、数多のグルマンを酔わせる握りで頂点に達します。その握り手たる瀬口さんは、博多の老舗「高玉」で修業を始めた生粋の職人。後に寿司の指導者としてモナコ公国の五つ星ホテルに招かれ、かのジョエル・ロブション氏やジョエル・デュカス氏とともに、アルベール大公の挙式で寿司を振舞ったこともあるそうです。

が、そんな華やかな経歴にも慢心せず、「菊鮨」を継いだ瀬口さんはひたむきな研鑽を続けます。その結晶である渾身の寿司は、毎回客の前で行う“シャリ切り”で開幕。炊き立ての米と赤酢が混ざるたび、温かな香りがふわりと周囲を包みました。

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次々と供される寿司は、どれも優美で凛々しいものばかり。膨大な仕事と繊細な感性で、100%引きだしたネタの魅惑は高級店だけが踏みこめる領域です。端正な流線型のフォルムも、食べやすさがよく計算されていました。
10日寝かせて表現する五島産クエの滋味。八戸産マグロの中トロの罪深き恍惚。職人の技量が刻まれた天草産コハダの清冽な余韻。魚種は違えど、すべてに忘れがたい豊穣さが溢れています。

「寿司はシンプルゆえに奥深いし、難しい。そのぶん握り手の生き様も強く現れるんですよね」。心技体の高みに達して初めて握れる寿司がある。だから瀬口さんは、職人である前に、まず真摯な人間であろうと努めます──この素晴らしき食文化への愛と敬意を原動力に。「菊鮨はなぜうまい?」という問いへの解も、きっとそこにあるはずです。

「菊鮨」の詳しい情報はコチラ

昼なら非会員も入店可!平尾の「会員制寿司店」で贅沢ランチ ”鮨 麻生 平尾山荘”

「鮨 麻生 平尾山荘」は、福岡でも珍しい会員制の寿司店。独特の営業形態ゆえ初耳の人も多いでしょうが、まさに知る人ぞ知る大人の隠れ家であり、「あの扉の奥にはどんな贅沢が?」と想像をかきたてるミステリアスな一軒です。

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客席はカウンター7席と個室1室。窓越しに緑を眺めながらの食事は、ディナー時とは違った魅力を添えるでしょう。
高級感と快適さが完璧に調和するデザインは、「シーサイドももち」などを手掛けた街づくりの第一人者、ZEN環境設計の中村久二さん。店主の吉田孝弘さんも、「この素晴らしい空間は私たちの自慢です」と目を細めます。

その吉田さんが振る舞うのは、寿司と料理を交互に出すコース。「料理で満腹になる前に、主役の寿司もしっかり味わってほしい」と初代料理長が採用した方法で、2012年の創業時には目新しいスタイルでした。“二代目”の吉田さんもその想いに共感し、常に独自の創意を加えながらこれを継承しているそうです。

今宵は11,000円のおまかせを注文。内容は月替わりで、魚介は主に上質な北部九州産を仕入れています。さて、そんな噂のコースは定番の貝のスープでスタート。滋養あるエキスで五臓六腑を温めたら、次は京都の伝統菓子「水無月」に見立てた水無月豆腐が供されました。ほの甘さとモッチリ感が楽しい胡麻豆腐です。

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最初の寿司の登場は、3品目のタコの湯引きの後でした。この日は舌に吸いつく滑らかさの対馬産マグロと、海ぶどうで風味を高めたヤリイカです。

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いずれもネタのしっとり感が印象的ですが、吉田さんが「その秘密は“氷室”です」と教えてくれました。氷の塊で食材を冷やす日本古来の冷蔵庫で、庫内の湿度が高いため鮮魚を乾燥させることなく保存できるのです。

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ここで一旦、香ばしいカツオの藁焼を挟み、再び寿司の出番です。今度はコチとアジの2貫で、これまたスルリと気持ちよく胃に収まりました。美濃の赤酢を合わせたシャリの食感も絶品。これは水分の少ない新潟産寿司専用米に、コシヒカリを2割加えて粘りを与えた自信作です。

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コースの総仕上げとあって、最後の寿司のうまさも別格。シャリとほぼ同量を乗せた甘み満点のウニも、トロトロに炊いたアナゴもこれ以上ない至福の味です。他にも、いなり、焼きたて玉子焼き、赤出汁、デザートが付く充実の構成でした。

「鮨 麻生 平尾山荘」の詳しい情報はコチラ

盛り沢山のコースは満腹必至!東京帰りの店主が営む、春吉の隠れ家寿司店 ”鮨 一徳”

一時の勢いはないものの、いまも新規参入の絶えない福岡寿司界。選択肢の着実な広がりに、愛好家の“嬉し悩まし”はまだまだ続きそうです。そんななか、2023年10月に登場したのが「鮨 一徳」。東京帰りの店主が営むニューフェイスは、そこにどんな口福をもたらすのでしょう。

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店主の久保孝徳さんと奥様が迎えてくれました。ご夫婦の人柄も手伝って、カウンター8席の店内はほんのりあったか。先ほどの緊張も瞬時にほぐれます。ビルの表情がクールなだけに、好ましいこのギャップは高得点。“隠れ家マニア”にもお勧めですよ。

そんな「一徳」のメニューは16,500円のおまかせコースのみ。つまみ7~8品、握り13~14貫を交互に出す満腹確実の構成です。「味でも量でも満足して欲しいので」と微笑む久保さん。東京で江戸前の腕を磨いた33歳の職人は、どうやら結構なサービス精神の持ち主のようです。

その意気を込めたコースは気の利いたつまみからスタート。和食店修業時代の経験が生きた、確かな手仕事を感じるアテ揃いです。この「メカジキのおかき揚げ」と「焼き胡麻豆腐」はその一例。前者は柔らかなメカジキとクリスピーな衣の歯触りに、後者は丹念に練りあげた胡麻とくるみの風味に引き込まれました。海鮮系の素材に極上品だけを使っているのも好印象です。

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そうした鮮魚の魅惑は、多彩な江戸前寿司で本格的に開花します。「一徳」開業後、東京時代から味をガラリと変えたそうですが、その理由は素材の主役が九州産天然魚介になったから。「以前は昆布締めにしたような魚も、こちらではそのまま使って十分美味しい。そのことにまず驚きましたね」と久保さん。「それで僕の寿司もよりシンプルにしたんです。元々寿司もつまみも“引き算”が理想なので、福岡で独立したのは正解でした」

その言葉とともに供された、1貫目の長崎産ヤリイカはインパクト絶大な握りでした。極薄に切ったイカを層状に重ね、甘みを数倍に膨らませた名品です。
また、色鮮やかな赤身には大間のマグロを使用。優美な歯触りはもちろん、名産地の逸品に恥じぬ濃厚な甘みに唸らされました。

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珍しかったのがシメの干瓢で、久保さんは巻物ではなく、他の寿司と同様、干瓢を握って出します。「パリッとした美味しい海苔で召しあがってもらうには?」と考案したオリジナル。これはなかなか面白い寿司体験でした。

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常時30種以上揃う日本酒も、その和やかな時間を後押しするはず。「好みのものが一つは見つかるように」と全国から選りすぐった銘酒は間違いなしのラインナップですよ。

「鮨 一徳」の詳しい情報はコチラ

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