見た目スマート中身はしっかり骨太
フォルクスワーゲンT-Rocを試乗。

公開日

ライター 高橋陽介

ティグアン、T-CrossというフォルクスワーゲンのSUVシリーズに今年7月から追加されたT-Roc。クーペルックのスポーティなスタイルと、クリーンディーゼルの経済性が持ち味だ。

国産SUV勢と真っ向勝負のパッケージング

パサート、アルテオンなどにも通じる、近年のVWの流儀に則った、水平基調のすっきりとしたデザインを持つT-Roc。複雑に入り組んだプレスラインや凝りに凝ったディテール面など、演出過剰なデザインのクルマが多い中、T-Rocのシンプルな佇まいはひときわ魅力的に映る。
ボディサイズは全長4240mm(Rラインのみ4250mm)、全幅1825mm。これは昨年末に発売されたT-Crossよりひとまわり大きく、国産車のミドルクラスSUVと競合する数値となっている。
価格はエントリーモデル「スタイル」の384万9000円から、最上級グレード「Rライン」の453万9000円まで、4機種をラインナップ。アダプティブクルーズコントロールやプリクラッシュブレーキシステム他、主要な安全装備を全車標準とするなど、コスパという点においても国産SUVに十分対抗できるだけの内容を備えている。

ブリスターフェンダーを備えながらも、不要に強調することを避けたデザインは、ひとクラス上の上質さを感じさせる
今回取材した「Sport」には専用の18インチホイールが標準装備となっている

Cピラーからルーフラインを縁取るクロームの加飾。光沢が抑えられているため、取って付けたような安っぽさは皆無
シルバーカラーのルーフレールはエントリーモデルの「Style」を除く全車に標準

奇抜さを排除した造形の中で唯一、アイキャッチとしての主張が感じられるのが、バンパー中段部のデイタイムラインニングライト

使い勝手の良いインテリア

外観同様、インテリアも良い意味でオーソドックス。メーターこそ大型ディスプレイによるフルデジタル式となっているが、空調関係のコントロールもスイッチやダイヤルなど物理的な操作が可能なことは、幅広い世代から喜ばれるはず。センター部分には8インチのタッチスクリーン式インフォテインメントシステム「DiscoverPro」を全車に標準装備。スマホとの連動はもちろん、オンラインVICS情報や施設検索、近くのガソリンスタンドの料金など様々な情報が入手できるモバイルオンラインサービス「Guide&Inform」も新車から3年間、無償で提供される。
シートはグレードにより仕様が異なり、今回試乗した「Sport」にはホールド性を高めた赤いステッチのスポーツシートが備えられていた。リアシートの広さも水準以上で、足元中央付近には空調のダクトも備わる他、クーペルックによるヘッドクリアランスへの影響もほとんど感じられなかった。

あるべき物が、あるべき場所に備えられたインパネ周り。ステアリングは近年のVWではスタンダードとなっている、フラットボトムタイプを採用。また、ボディカラーによってはダッシュパッドの一部を同色でコーディネイトすることもできる

ステアリングのグリップ部に設けられたスイッチを操作することで、様々な情報を映し出すデジタルメータークラスターを全車に標準装備

クルマ好きの琴線に響く乗り味

兄貴分のティグアンはディーゼル/ガソリンの双方を揃えているのに対し、T-Rocのエンジンは2リッター・ディーゼルターボのみ。正直、試乗前は筆者自身も「ガソリン設定があればなァ」と思ったが、走り続けて行くにつれ、その気持ちに変化を感じるようになった。カラカラというディーゼルエンジン独特のアイドリング音は人によっては耳障りとされ、メーカー側も遮音材を多用するなど、車内への音の侵入を出来るだけ抑え込む努力がなされている。では、T-Rocはどうか?
ズバリ、聞こえて来る(笑)。しかし、その音やダイレクトなレスポンスにはハイブリッドやEVでは得られない、かつてのクロカン4駆的な逞しさやクルマらしさが感じられ、SUVというキャラクターにとてもマッチしているように思えて来たのだ(T-Rocの駆動方式はFFのみだが)。

エンジンは2リッター・ターボディーゼルのみ。回転数の高低によりガイドベーンの開口面積を変化させ、タービンブレードに当たる排気ガスの流速を最適にコントロールする可変式ガイドベーン付きターボチャージャーを採用。最高出力は150馬力。最大トルクは34.7kgm。燃費はJC08モードで19.5km/l、WLTCモードで18.6km/l

ディーゼルならではの粘り強いトルク特性も同様で、円熟の域に達したDSGとの組み合わせがもたらす走りは「スポーツカーに乗りたいけど、家族の手前、実用的なリアシートは不可欠だから・・」と、ファミリーカー選びで頭を悩ませいるクルマ好きのおトーサンの心にもきっと響くモノがあるはずだ。
そんなクルマ好きであればご存知だろうが、T-Rocは本国に対し3年遅れでの日本導入となっている。折からのSUVブームに乗っかって、ドタバタで持って来たのでは?と、穿った見方をする人もなかにはいるかも知れないが、個人的には久しぶりの「めっけもん」に出会えた気分だ。

上級車種アルテオンと同じように、エンブレム下に小さく車名のロゴが入る。リアゲートはパワー式で、カーゴスペースはリアシート使用時でも445リットルの容量を確保

弟分であるT-Crossとのサイズ比較。全長で125mm、全幅で65mm、全高で10mm、それぞれT-Rocの方がひとまわり大きい。デザインのテイストも若干異なる

Interviewee

店舗名

フォルクスワーゲン福岡

住所

〒815-0031 福岡県福岡市南区清水1丁目24−28

営業時間

10:00〜19:00

定休日

水曜日、第2木曜日

お問い合わせ

092-511-0100

関連記事