コーヒーは嗜好品とよくいわれます。だからこそ、自分好みの美味しいコーヒー豆を探し求め、選ぶ人がほとんどでしょう。

およそ20年前にスペシャルティコーヒーが登場したことによって、コーヒーは豆の産地や精製方法、焙煎度合いによって、まったく違う味わいになることが広く知られるようになりました。一昔前は、キリマンジャロ、ブルーマウンテン、コナ、モカといった産地に由来する大まかな分類しかされてこなかったコーヒーですが、現在では、ブラジル、グアテマラ、ホンジュラス、エルサルバドル、コスタリカ、ケニア、エチオピアなど、具体的な国名で分類されることがほとんどで、しかも店舗によっては農園や生産者の名前まで、商品名に冠している場合もあります。

そんな多様化が進んだコーヒー業界で、世界的にみても特に注目を集めているのが、ゲイシャというコーヒーです。品種自体は1930年代に発見と、歴史はとても長いのですが、一躍脚光を浴び始めたのは、2004年、パナマでのこと。『エスメラルダ農園』が出品したゲイシャが、ベスト・オブ・パナマというオークションで、ほかと圧倒的な大差をつけて優勝したのです。高い評価を得た理由は、明確なフレーバーにありました。

私自身、最初にゲイシャを飲んだときに「これがコーヒーなの！？」と思ったほどで、その衝撃は今でも忘れられません。

そして、私がゲイシャを初めて飲んだ店が今回紹介する『REC COFFEE』。福岡のコーヒー業界を牽引する人気店で、代表を務める岩瀬由和さんは、ジャパンバリスタチャンピオンシップで2年連続日本1位、さらにワールドバリスタチャンピオンシップで世界2位と、日本を代表するバリスタとして活躍しています。

『REC COFFEE』で、取り扱っているゲイシャは、一年を通して大体5〜6種。今年販売していた2019年度のロットはすべてパナマ産で、『エスメラルダ農園』と『ジャンソン農園』、『ナインティプラス』の生豆を仕入れています。価格は100g4000円以上と、通常のコーヒー豆の4〜6倍はする、とても高価な豆です。

なぜ値が張るのかというと、純粋に栽培するのが難しく、収穫量も極めて少ないから。つまり、流通もそれに比例して少量で、日本に入ってくる生豆はごくわずかなんです。

『REC COFFEE』代表の岩瀬さんは「コーヒーの品種にはブルボン種やカツーラ種などたくさんありますが、普通に飲んで、その品種の個性を明確に感じることは、コーヒー業界に身を置く人でもなかなか難しい。ただ、ゲイシャは飲んだ瞬間に、違いに気づくほど、明確なフレーバーを持っています。特に、パナマ産のゲイシャはジャスミンやシトラス、ピーチを思わせる華やかなフレーバーを持っているため、一度飲んでいただければ、その個性に驚かれるはず」と解説。実際、私自身、初めて飲んだパナマ産のゲイシャの味わいには、とても驚かされました。美味しいという次元を超えて、“鮮烈”という言葉が似合う体験。「ただ1杯のコーヒーを飲むという行為が、こんな感動を呼び起こすんだ」というほどに。

『REC COFFEE』では、ハイラインの豆を『Special Limited Selection』というシリーズに位置づけており、ゲイシャも同シリーズのもの。2020年9月時点で、ゲイシャは完売し、次回の販売開始は、2020年11月ごろを予定しているそう。福岡市内にある5店舗、東京にある1店舗の『REC COFFEE』全店で取り扱う予定なので、ぜひチェックしてみてください。