新型アウディQ3は、コンパクトクラスであることを忘れさせるほどの重厚な佇まいが印象的。実際、ボディサイズは先代に対し全長が約10cm拡大。オクタゴン（八角形）形状のグリルや新デザインのLEDヘッドライトがもたらす彫りの深いフェイス面に加え、車体の前後に刻まれたブリスターフェンダーのプレスラインも、フォルムの力強さをより一層強調させている。

また、エクステリア以上に斬新さを感じさせるのがインテリジェントコクピットと名付けられた運転席周り。ドライバーを囲むようにレイアウトされたインストルメントパネルはフロントグリルをモチーフとしたオクタゴン形状を反映。メータークラスター内には10.25インチの液晶ディスプレイが備わり、ステアリングのスポーク部に組み込まれたスイッチの操作によりメーターやドライバーインフォーメーション、カーナビのマップなどを表示。さらにセンターにもMMIナビゲーションの他、多彩な機能を備えた10.1インチディスプレイを採用。最新アウディの流儀に則った上質さと近未来感が表現されている。

搭載されるエンジンはQ3/Q3スポーツバックともにFF（前輪駆動）には４気筒1.5リッターターボ、クワトロには４気筒2リッターディーゼルターボと差別化が図られ、最高出力はいずれも150馬力を発生。今回試乗を行なったのはQ3クワトロにパッケージオプションが追加されたアドバンスドというモデルで、車重は約1700kg。スペック的な数値から推察すると正直、アンダーパワーなのでは？という懸念もあったが、いざ走り出すや、それは全くの取り越し苦労だったことを実感。大人３名を乗せたQ3は、アクセルペダルに軽く足を添えただけで軽々と加速し、静止状態から動き出す際も車重を意識することはほとんど無かった。それもそのはず、改めてスペックを見直したところ、２リッターTDIエンジンの最大トルクは、ひと世代前の３リッタークラスに匹敵する340Nm（34.7kgm)をマークしているのだ。また、静粛性についてもディーゼル車であることを忘れさせるほど秀逸で、全車に与えられる７速Sトロニックの変速フィーリングの滑らかさとも相まって、余裕溢れる走りを存分に楽しむことができた。

狭い道での取り回し性も優れたボディサイズ、先進技術による様々な運転支援装備、そして438万円からという極めて戦略的なプライス設定など、もはやマイナス的な要素を探す方が困難と思えるほどの魅力を備えた新型アウディQ3。ひとたび試乗すれば、さらに「欲しい！」と心を揺さぶられること受け合いだが、一つだけ厳しいお知らせが。今回取材にご協力を頂いたアウディ久留米によると、ウエイティングリストはすでに満杯の状態で、今オーダーを入れても納車は来年の春頃になるとのこと。ちなみに、その内訳を尋ねたところ、スポーツバックが圧倒的に多数派を占めているという。SUVクーペは昨今のヨーロッパ車（とりわけ、ドイツ勢）の中では特に人気のカテゴリーとなっているだけに、この結果は当然と言えば当然かも知れないが、個人的にはシンプルに徹した標準のQ3に一票を投じたい。いずれにしても、行列に並ぶなら、一日でも早めが良さそうだ。