武器としての政治思想

政治学の俊英が、現実の政治に飛び込む
『武器としての政治思想』著:大井赤亥

公開日

リブロプラス 野上由人

現代日本政治をかたち作っている「改革保守」に対峙する可能性とは? 「中道リベラル」と「左派ポピュリズム」の互恵関係とは? 「新自由主義グローバリズム」に代わる新たな国際秩序の選択肢とは? 学術の視野から時代を掴み、醒めた思考で新しい選択肢を示す!

とりあえず私としては「たかが政治」と思って「政治の使い勝手」を吟味する、そんな「『たかが政治』のススメ」を提唱したいと思っている。もちろん過剰な利益誘導は反動を招くだろうが、まずは自らの利益を判断基準とし、自分の得になるように政治家を使ってみる。自分が損になるなら政治家を見限ってやる、そんな「政治の使い勝手」を糸口にして政党を、政治家を使うアプローチを提唱したい。【本文より】

『武器としての政治思想』
著:大井赤亥

衆議院議員選挙に小選挙区制が導入されてから四半世紀を超えた。小選挙区制による最初の選挙は1996年、時の政権は橋本内閣だ。以来8回の選挙があり、はじめの3回こそ自民党は過半数に届かなかったが、2005年の所謂「郵政選挙」以後、必ず第一党が過半数の議席を占め、制度の狙いであるところの「政権選択選挙」として定着しつつある。

その間、2009年には自民党から民主党へ、そして2012年には民主党から自民党へ、2度の政権交代を経験した。

 この四半世紀の日本政治を政権選択の「対立軸」に着目して総括したうえで、現在の自公政権に対峙するもうひとつの選択肢(オルタナティブ)を提示することが、本書の主題である。

武器としての政治思想

そのために、欧米の政党政治が形成している対立軸を分析する。現実政治を素材にした政治思想入門としてわかりやすくまとまっているのは、本書の利点のひとつだ。

しかし何より本書が特異なのは、政治学者である著者が、その分析に基づいて、自ら現実政治の中に飛び込んでいく点にある。なんと、広島2区から、次の衆院選に立候補する予定なのだ。現在、広島にて立憲民主党の予定候補者として政治活動中である。

著者は、新自由主義ベースの行政改革競争を対立軸にしてきた平成政治史を終わらせ、新しい福祉政治のモデルを提示し、社会運動や左派ポピュリズムと共闘しながら、リベラルな政治価値を擁護する勢力を育てようと企む一人だ。その分析と提言が、実際の選挙結果によって判定される。この勝負、ただごとではない。

活動の原点に、2015年の安保法制反対デモがある。自身、積極的にデモに参加する当事者だった。同時に、政治学者としては、考察の対象でもあった。その経験と学識を踏まえた、社会運動と政党の共闘関係、ポピュリズムと既存政党の役割分担、運動から制度への接続を支えるコミュニケーションといった論点の記述には、迫真性があり読む者を熱くする。野党の選挙協力や連立政権構想の理論的支柱にもなり得よう。

ところで、同じ政治状況から真逆の「対立軸」を提示する本として、三浦瑠麗『日本の分断』がある。どちらに説得力があるか、読み比べを推奨したい。

著者プロフィール

大井赤亥
1980年東京都生まれ、広島市育ち。政治学者。東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学。博士(学術)。専門は政治思想史・現代日本政治。東京大学、法政大学、昭和女子大学などで講師を務めた後、現在、第49回衆議院議員選挙の候補予定者(広島県第2区)。著書に『ハロルド・ラスキの政治学――公共的知識人の政治参加とリベラリズムの再定義』(東京大学出版会、2019年)、共編著に『戦後思想の再審判――丸山眞男から柄谷行人まで』(法律文化社、2015年)。

INFORMATION

書籍名

武器としての政治思想

著者名

大井赤亥

出版社

青土社

価格

2,000(税別)

発売日

2020年12月

ISBNコード

9784791773350

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