住む憧れ「グランドメゾン」の人気の理由。
コーヒーと親和性の高い食べ物の一つ、カレー。ともに鼻に抜ける香りが刺激的なのが、相性の良さの理由の一つだろう。コーヒーのクオリティを重視しているカレー専門店も多いが、自家焙煎店が営むカレーの店というのはほぼ見かけない。しっかりこだわりが光るカレーを食べたあとに、自家焙煎した豆で淹れたコーヒーを飲むという贅沢。しかも気軽に利用できるカジュアルなスタイルならいうことない。今回はコーヒー×カレーを柱に掲げる『あびる珈琲 原店』のお話。
香り、苦味、甘味、旨味を巧みにブレンドする、コーヒー屋が作るカレー
「コーヒーとカレーは相性が良い」とよく感じます。コーヒー好きの人がカレーにはまるのはよく耳にする話で、ともに刺激的な味わいなのが、共通点としてあるからかもしれません。
実際、ブラックコーヒーやラテにシナモンやカルダモン、ジンジャー、ブラックペッパーといったスパイスを入れるアレンジもポピュラー。ここ最近ではロサンゼルスなどアメリカ西海岸を中心にスパイスやハーブを合わせる、カクテル風の創作コーヒーも注目を集めています。
原店に立つマスターの阿比留 英さん。自家焙煎の喫茶店勤務を経て、コーヒーの世界に入った。
スパイスという素材に惹かれカレー店を開店
そんなスパイスという素材に惹かれ、コーヒーの自家焙煎をメインにしながら、カレー店を開いてしまったのが、早良区原にある『あびる珈琲 原店』の阿比留 英さん。
「2年ぐらい前、スパイスを混ぜて、オリジナルブレンドを作るワークショップに参加したのをきっかけに、スパイスにはまりました。僕はコーヒー店を始めるときも、まずは小さな焙煎機を購入して、自宅で焼き始めたように、まずはやってみて、どんどんハマっていくタイプ。スパイスの調合やカレー作りも書籍などを参考に独学で始めましたね。1号店である弥生店で2019年春ごろから週末限定でテイクアウトのカレーを販売をスタート。限定5食ぐらいから始めて、10食、30食と仕込む量も徐々に増えていきました。それなら、カレーメインの2店舗目を開いてみようと。計画を練っていたわけではなく、なんとなくの流れですね」と笑う阿比留さん。
原店で飲めるコーヒーはオリジナルブレンド3種。一杯一杯、ハンドドリップで抽出する。
原店では豆売りも中煎り、中深煎り、深煎りのブレンド3種に限定。それぞれ100g650円。
シンプルにお客さんに喜んでもらえるコーヒーとカレーを目指す
阿比留さんは「コーヒーとスパイスは似ている」と続けます。コーヒーは生豆を焙煎する、スパイスも種類によっては乾煎りする。さらにブレンドする点も同じ。味わいやフレーバーの組み立て方、考え方がとても似ているのです。
そんなスパイスとの出会いを経て、2020年4月にオープンした『あびる珈琲 原店』。メニューはスパイスカレー(780円〜、あいがけ2種1000円)と、1杯点てのハンドドリップコーヒー(450円)がメイン。スパイスカレーは5、6種あるレシピから、不定期替りで2、3種が登場し、ラム肉のキーマカレー、バターチキンカレー、牛スジ煮込みのカレーなど、型にはまらないスタイル。
阿比留さんは「僕の考えはコーヒーもカレーも同じ。豆の産地とか、どこの国のスタイルのカレーとか、あんまり気にしなくていいんじゃないかなって。おいしければそれが正解だし、お客さんの口に合うことが一番大切」と話します。確かに店で出しているブレンドコーヒーも“あっさり”、“まろやか”、“ほろにが”と感覚的で、わかりやすいメニュー名。コーヒーやカレーの知識がない人でも、気軽に利用できそうです。
店中央に10席を用意。壁に飾るドライフラワーの一部は阿比留さんが手作りしたもの。
スパイスカレー(780円〜)。写真はラム肉のキーマカレー。挽き肉は大きめにカットされており、肉感しっかり。ホールスパイスを使っているので、香りも強い。
店に飾られている家族の肖像画。糸島市在住の画家、宮田ちひろさんが描いてくれたもので、温かみがある。阿比留さんは2児の父親で、とても家族愛が深い。「休日は子どもたちとキャンプするのが楽しみ」と話す。
店舗があるのは原通り沿い、2020年11月にオープンした『イオン原店』の少し南に位置。藤崎駅にほど近い弥生店でも金曜・土曜限定でテイクアウトのスパイスカレーを販売している。
自家焙煎コーヒー店としての歩みが導いたカレー店
一方で、初見で専門的なことを打ち出さないということは、味わいのクオリティだけで勝負する必要があるということ。それもあり、カレーには久留米市産の無農薬栽培の米、甘味が強く、濃厚な味わいの福岡市西区で育ったフルーツトマトなど素材を厳選。「これらの食材は、コーヒー店としてイベント出店する中で出会った生産者の方々から仕入れています」と阿比留さん。1号店である弥生店は2020年11月で7周年を迎えたそうです。今までの自家焙煎コーヒー店としての歩みや出会いを大切に、生まれたカレーというわけなんですね。
押し付けないスタイル、肩肘張らない雰囲気、パッと見でもわかる阿比留さんの気さくさ。友人の家に遊びに来るような感覚で日常的に訪れる常連さんが多いのも納得の居心地の良さです。焙煎職人が作るカレーとコーヒーをぜひ一緒に楽しんでみてください。
Information
店名
あびる珈琲 原店
住所
福岡県福岡市早良区原6-29-26
電話番号
営業時間
8:00〜16:00(売切れ次第終了)
定休日
日曜、月曜