デビッド・ボウイ

デヴィッド・ボウイの人生を変えた100冊

公開日

muto編集部

〈本はボウイの音楽と人生の羅針盤だった〉――ボウイ自身が選んだ100冊を語り尽くすファン垂涎の一冊。

Bowie's Books デヴィッド・ボウイの人生を変えた100冊 著者 ジョン・オコーネル、菅野楽章〈訳〉

デヴィッド・ボウイが亡くなってからもう6年以上が経つ。それでも彼以上に時代の象徴だったといえるアーティストを見つけることは難しい。
イギリスの雑誌NMEが行ったアンケートでは「20世紀で最も影響力のあるアーティスト」に認定されたこともあるボウイ。どこか儚く妖艶な魅力を纏う彼は、発表する楽曲毎に不思議な外見で物語の世界観を表現し、時には異星人の設定で観衆を魅了した。(彼の演じたジギー・スターダストはあまりにも有名)その出で立ち、スタイルは常に先鋭的。そうなると普通で あれば難解なアーティストになってしまうところだが、ボウイはその姿勢を保ちつつもポピュラーな存在であり続けた。 生前はツアー中に移動式の図書館と共に世界を廻っていたといわれるほどの読書家だった。(読書を嗜むカバー写真は70年 代にボウイがロサンゼルスに住んでいた時に撮影されたものだそう)そのボウイが2013年にロンドンのV&A博物館の企画展〈デヴィッド・ボウイ・イズ〉のために自ら作成したのが本作品で紹介されているリストだ。ボウイ自身が読んできた何千 冊もの本のなかから最も重要で、影響が大きいと考えた100冊の本。そのリストを12歳からボウイの大ファンであり「タイ ムズ」誌、「ガーディアン」誌にも寄稿した音楽ジャーナリストのジョン・オコーネルが、実際に親交のあった関係者との やりとりや著者とのエピソードを通じて紐解いている。

デビッド・ボウイ

人生で最も重要な出来事の一つと述べたジャック・ケルアック「オン・ザ・ロード」との出会い。「ローリング・ストーン 」誌でボウイの作品を酷評したグリール・マーカスとの関係。日本文化への興味に繋がったであろうダグラス・ハーディン グの「心眼を得る」について。妻イマンとの関係を「A Grave for a Dolphin」の一節に重ねた、彼の感動的で深い愛情。
それぞれの最後にその書籍がネタとなったと推測する歌が掲載され、どのエピソードも興味深く読むことができる。
世界文学の名作が並んだこのリストは名著の紹介としてだけでも一読の価値があるのだが、当時の時代背景と共にデヴィッ ド・ボウイをすぐそばに感じることができるのがなにより嬉しい。そこには手元の本を開きながら自分と対話し、権力や社 会風俗、そして大衆にさえも迎合せず、常にありのままの自分であろうとする彼の姿が垣間見える。 冒頭にも述べたが彼が亡くなってからもう6年以上が経つ。今は亡き彼にもう一度会うため、この本を開いてみてはいかがだろうか。

著者プロフィール

ジョン・オコーネル(John O’Connell)
1972年生まれ。音楽ジャーナリスト。『タイム・アウト』のシニア・エディター、『ザ・フェイス』の音楽コラムニストをつとめたのち、現在はフリーランスとなり、主に『タイムズ』と『ガーディアン』に寄稿している。2002年に実際にボウイにインタヴューを行った。ロンドン在住。

菅野 楽章(かんの・ともあき)
1988年生まれ。訳書にエリス『帝国のベッドルーム』(河出書房新社)、ラッド『世界でいちばん虚無な場所――旅行に幻滅した人のためのガイドブック』(柏書房)、パイン『ホンモノの偽物――模造と真作をめぐる8つの奇妙な物語』、レンジ『1924――ヒトラーが“ヒトラー”になった年』、クラカワー『ミズーラ――名門大学を揺るがしたレイプ事件と司法制度』(以上、亜紀書房)などがある。

Information

タイトル

Bowie's Books デヴィッド・ボウイの人生を変えた100冊

著者

ジョン・オコーネル 著
菅野 楽章 訳

出版社

亜紀書房

価格

2,420円(税込)

ISBN

978-4-7505-1716-2

この記事の著者について
[テキスト/佐藤弘庸]
1987年札幌生まれ。2009年日本出版販売への就職を機に上京。入社後は紀伊國屋書店を担当。
2011年にリブロプラス出向。2016年より日販グループ書店の営業担当マネージャー。
2022年より文喫事業チームマネージャー兼 文喫福岡天神店 店長。

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