オトコのカラダはキモチいい

『オトコのカラダはキモチいい』
著者 : 二村ヒトシ、 金田淳子、岡田育

公開日

リブロプラス 野上由人

AV監督の二村ヒトシ、ボーイズラブ研究家の金田淳子、腐女子で文筆家の岡田育。現代の性の三賢人が「男性の肉体の官能」を徹底考察! 二次元と三次元の垣根を越え、男女双方のポルノグラフィからゲイ文化まで、縦横無尽に語りおろした画期的な入門書。

『オトコのカラダはキモチいい』

まあ、おかしな本である。しかし、不真面目ではない。

男性のオーガズムを追求するAVレーベル「マザーズ」の主宰・二村ヒトシ、上野千鶴子ゼミ出身の社会学者でBL(ボーイズラブ)研究の金田淳子、『婦人公論』編集部出身で情報番組「とくダネ!」の月曜コメンテーターとしても知られるエッセイスト・岡田育。

この3人が、男性の性的快楽、その可能性の中心を探究する。 結論から言えば、男性は自分でコントロールできない受動的な快楽に慣れていない。慣れていないから怖れ、遠ざける。それはときに、多様な快楽を初めから排除し、また異端視する規範となって、男性の性的自由を随分と狭めている。場合によっては、女性や同性愛者への無理解に基づく偏見や蔑視にも繋がっている。

オトコのカラダはキモチいい

そこで、乳首や前立腺への即物的な刺激でスイッチを入れ、制御不能な快楽に身を委ねてみたならば、男性はより自由に解放され、性的にも社会的にも得るものが大きいと説く。

そのためにいくつもの体験談や資料が紹介され、また、男性の性を自由に描くBLの先見性が再発見される。これは、セックス(身体)の解放を通じて、ジェンダー(規範)からの解放を促す、社会変革の方法論を提示した本として読める。もちろん、ただのエロ話として読んでもおもしろい。

このテキストは、2015年に雑誌mutoに掲載されたものです。

著者プロフィール

二村 ヒトシ
1964年、六本木生まれ。慶應義塾幼稚舎卒、慶應大学文学部中退。97年にアダルトビデオ監督としてデビュー。現在も4つのAVレーベルで、プロデューサー兼チーフディレクターを務めている。著書に『すべてはモテるためである』『なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか』(イースト・プレス)など。

金田淳子
1973年富山県生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学。社会学者。やおい・ボーイズラブ・同人誌研究家。共著に、『文化の社会学』(佐藤健二・吉見俊哉編著、有斐閣、2006年)「第十章 マンガ同人誌 解釈共同体のポリティクス」など。ひげ・めがね・老人・武将・ヘタレ・年下攻が大好物。ジェンダー論、社会学の視点から、やおいを研究している。

岡田育
東京都出身。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。中央公論新社で婦人雑誌と文芸書の編集に携わり、2012年に退社後、エッセイの執筆を始める。2015年夏にニューヨークへ移住後、パーソンズ美術大学でデザインを学び、現在は執筆業を続けながらグラフィックデザイナーとして活動。著書に『ハジの多い人生』(新書館)、『嫁へ行くつもりじゃなかった』(大和書房)『40歳までにコレをやめる』(サンマーク出版)など。

INFORMATION

書籍名

オトコのカラダはキモチいい

著者

二村ヒトシ、金田淳子、岡田育

出版社

角川書店

価格

¥1,430

ISBNコード

9784040674209

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