お金の未来

あらためて考える。「お金」に未来はあるのか?

公開日

muto編集部

激変するお金と新しい世界――ビットコイン、ブロックチェーン、NFT、Web3…お金とテクノロジーのプロが語り尽くす〈一番わかりやすいお金の入門書〉

『お金の未来』著:山本康正、ジェリー・チー

暑かった夏がひと段落すると短い秋を挟んで、お金のかかるイベントが目白押しの年末。少し懐が温かくなったかなと思ったら年が明けるころには綺麗にお金はどこかに消えてしまう。お金に好かれるのは難しいと実感する日々…。

最近は電子決済を利用する機会も格段に増えてきました。目まぐるしい変化の中でこれからのお金はどうなっていくのか、大切だとわかってはいるもののなんだか踏み込めないでいる。そんな自分と向き合わなければ…との思いが本書を手に取った理由です。

お金の未来

この本ではまず「お金とは何か?」というところからスタートしています。「お金」という概念は根底に「信頼」がないと成立しません。その信頼をこれまでは国家が担保してくれていたわけですが、それがインターネット以来の大発明といわれるブロックチェーンというテクノロジーにより、国という存在がなくてもお金の信頼を担保できるようになったという。なるほど、これが近年よく耳にするようになった仮想通貨に代表される暗号資産であり、お金の革命ということか。

 「力は金だ」というのは日本列島改造論を書いた田中角栄のことばですが、先述の革命によりお金の持つ力を国家だけが独占するのではなく、それぞれのプレーヤー(企業・個人)が享受できる環境が整ったと著者である山本氏は語ります。最近はどの分野においても「個人」が主体となり活躍する場面を目にしますが、本書でも新しいお金が普及することで中央集権から非中央集権へ移り変わり「個人」にとって面白い時代が到来していると書かれています。

世界中どこにいっても使える世界統一通貨がでてきたり、コンテンツ制作者とユーザーが直接繋がることで産業構造が激変してしまったり…。これまでの「当たり前」が変わる稀有な時代であること、そしてこれらの新技術による大いなる可能性が語られています。
 新しい環境や見たことのない技術に出くわすとどうしても不安になってしまう自分がいます(仮想通貨破産なる言葉も耳にするし…)が、ただ不安を避けて通るのではなく、わからない自分にも向き合い、新しい世界を楽しみながら進んでいきたい。そうゆう自分でありたい。本書はそのための手助けとなってくれる一冊だと思います。
用語説明一覧ページもあり、わからなくなった時は立ち戻ることができる点も非常に有難い。おススメです。

著者プロフィール

山本康正
1981年、大阪府生まれ。東京大学大学院で修士号取得後、三菱東京UFJ 銀行(現・三菱UFJ 銀行)米州本部に就職。その後、ハーバード大学大学院で理学修士号を取得。卒業後にグーグル株式会社(Google Japan)に入社。大企業の幹部に対し、テクノロジーを活用したビジネスモデル変革等のデジタルトランスフォーメーションを支援する。現在はベンチャー投資家として活躍。日本企業やコーポレートベンチャーキャピタルへの助言なども行う。京都大学経営管理大学院客員教授。プロ野球のパ・リーグをデジタル技術等で支援するパシフィックリーグマーケティング株式会社にて、テクノロジーアドバイザー。著書に『次のテクノロジーで世界はどう変わるのか』(講談社現代新書)、『2025年を制覇する破壊的企業』(SB新書)など多数。

ジェリー・チー
シリコンバレー育ちの台湾系アメリカ人。1984年、アメリカ生まれ。米スタンフォード大学工学部経営工学科卒業。在学中に日本留学を経験し、日本に魅了される。卒業後は、バークレイズ・キャピタル証券(現・バークレイズ証券)に就職し、東京勤務。その後、中国・北京にて証券自己勘定取引会社を設立・経営。会社売却後、米ペンシルバニア大学ウォートン・スクールにてMBAを取得。グーグル合同会社(Google Japan)、スーパーセル(東京支社で勤務したのち、本社ヘルシンキで勤務)、スマートニュースなどで勤務(主に機械学習やデータ分析)。東京を拠点に、キャリアを形成中。

INFORMATION

タイトル

お金の未来

著者名

著:山本康正、ジェリー・チー

出版社

講談社現代新書

価格

定価:902円(本体820円)

ISBN

978-4-06-528297-7

この記事の著者について
[テキスト/佐藤弘庸]
1987年札幌生まれ。2009年日本出版販売への就職を機に上京。入社後は紀伊國屋書店を担当。
2011年にリブロプラス出向。2016年より日販グループ書店の営業担当マネージャー。
2022年より文喫事業チームマネージャー兼 文喫福岡天神店 店長。

関連記事