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『中国化する日本』で大きな反響を呼んだ筆者。一躍、期待される論客となりましたがその矢先に休職、ついには大学を離職するに至ります。原因は、躁うつ病(双極性障害)の発症でした。自分を培ってきた「平成」、その30年の思潮とは何だったのか。なぜ知識人は敗北し、リベラルは衰退したのだろう。そして、病を治すのも、また「知」なのだ。これから「知」に向かおうとするすべての人に読んでほしい、必読の一冊です。
『知性は死なない ー 平成の鬱をこえて』著:與那覇潤
NHK「ニッポンのジレンマ」などテレビにも出演し、「新しい論壇」をリードする知識人として注目を集めた論客。指摘は鋭いが言葉は上品で、愛されるキャラクター。
著書『中国化する日本』は、学校で学んだ歴史の常識を最新の研究成果によって打ち砕きながら比較文化史的に日本の来し方行く末を描いて高く評価され、幅広い読者を得た。その與那覇潤が、あるときパタッとメディアから消えた。
どこか外国の大学にでも行って研究に専念する時期なのかと勝手に思い込んでいたが、違った。そのことが判ったのは、本書の刊行予定を知ったときだった。
著者はこの間、躁うつ病(双極性障害)を患って療養中だった。
本書は回復後の第一作である。
自らの病状、治療経過、回復への道のりを丸ごと本書の中で明らかにしている。
その部分は闘病エッセイとしても読める。
しかし、それでは終わらない。
実に驚くべきことに、その体験から得られた知見を下敷きにして、この体験がなければ絶対に書けなかった新しい視座で、あの『中国化する日本』の続編と位置付けたくもなる「平成30年史」を書いてみせたのだ。
転んでもただでは起きないと言ったら語感がよくないが、全身全霊とはこういうものかと思わせる怪力を見た。
何より、よくぞ戻ってきてくれました、しかも全く新しいパワーを備えて一段と頼もしくなって!と再会を喜びつつ、ほんとうにとんでもない才能の書き手であることを再認識させられた。あらゆる意味で感動的な復帰作である。
この本を読んだあとでは「能力」や「知性」といった単語を軽々には使えなくなる。
平成史を振り返りながら知識人の「敗因」に迫り、能力観を再定義し言語と身体の緊張関係に着目する本書には、いま頭に浮かんだことや、あるいはこれまでに考えてきたことを「あれ?違うかな?」と疑わせる力がある。
詳しくは、それぞれについての分析的な記述を実際に読んで、体当たりされたような読後感をぜひ味わってもらいたい。
このテキストは、2018年7月発刊の雑誌mutoに掲載されたものです。
著者プロフィール
與那覇潤(よなは じゅん)
1979年、神奈川県生まれ。歴史学者。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。学者時代の専門は日本近代史。地方公立大学准教授として教鞭をとった後、双極性障害にともなう重度のうつにより退職。2018年に自身の病気と離職の体験を綴った『知性は死なない』が話題となる。著書に『中国化する日本』、『日本人はなぜ存在するか』、『歴史がおわるまえに』、『荒れ野の六十年』ほか多数。
Information
書籍名
知性は死なない 平成の鬱をこえて
著者名
與那覇潤
出版社
文藝春秋
価格
1,500円(税別)
発売日
2018年4月
ISBNコード
9784163908236