【muto40号】福岡から有田へ、非日常に浸る一泊二日の旅【食&宿編】

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muto編集部

やきものの町として近年では海外からも多くの人が訪れる佐賀県有田町で、非日常を味わう一泊二日のショートトリップを体験する特集。今回は有田のグルメと宿のフォーカスし、有田の意外な一面をご紹介。

有田の食材に舌鼓を打つ滋味に富んだ料理

日本最古の磁器の生産地として、今も多くの窯元が残る有田だが、実は食材も豊富に揃う。町の半分以上が林野に覆われた有田は、町の10%以上、つまり林野以外の4分の1強が田畑として利用(令和4年面積調査を参照)。良質な耕作地となった要因は、黒髪山系に囲まれた盆地で、有田川をはじめとした水源が豊富にあることだと考えられる。

有田の西部は稲作地が多く「日本の棚田百選」に選ばれている岳地区など、美しい景観を見られる場所も多い。また佐賀県下有数の畜産地でもあり、有田の豊な自然の中で育つ「ありたどり」や「ありたぶた」といったブランド食肉も育てられている。

そんな有田の食を季節ごとに味わえるのが「大和一心庵 雪月花」。人気の蕎麦店を営んでいた店主が、町から離れた場所に移転し、古き良き日本をテーマにこの店を開業した。ここで出されるのは有田の地の素材を使う季節の料理。仕入れや収穫でその日の料理が決まるので、季節ごとに違った一品を楽しむことができる。中でも店主自ら手がけた野菜は絶品。店主のこだわりや野菜づくりの話といっしょに味わってほしい。

有田の豊な水源が感じられる場所もある。それが有田の景勝地の一つ、竜門峡にほど近い場所にある「料亭 龍泉荘」。竜門峡から有田川に流れる清流のほとりに在るこちらの料亭では、鯉をはじめとした川魚料理が楽しめる。一年を通して味わうことができる鯉は定番の「洗い」をまず味わってほしい。肉厚で食べ応えがあり噛むたびに溢れ出す甘味や旨味が堪能できる。ちなみに有田町民が度々この料亭をハレの日の場に選ぶそうだが、この素晴らしいロケーションと間違いない料理を知るとそれも納得してしまう。

大和一心庵 雪月花
有田の中心部から車で約15分ほど離れた小高い丘に構えるこちらのお店は、元々蕎麦店を営んでいた店主が2015年にこの地に移転し和食処として開業した。開業前、店主が京都に度々訪れて出会った地の素材を使う素朴で味わいのある料理を有田でも味わってほしいという想いから、今のスタイルになったのだそう。ここで味わえるのは店主自らが手掛けた野菜や地元農家から仕入れる野菜を贅沢に使う日本料理。また長年十割の手打ちにこだわる蕎麦もこちらの名物料理の一つ。窓から望む黒髪山系や有田の長閑な田園風景を楽しみながら有田の味が堪能できる。
佐賀県西松浦郡有田町上本乙3390-6
0955-46-3170
http://www.yamatoisshinan-setsugetsuka.com


料亭 龍泉荘
「名水百選」「水源の森百選」に選ばれている竜門峡のほど近くにあるこちらの料亭では、鯉やニジマス、鮎、ヤマメといった川魚料理を味わうことができる。また有田町民の「ハレの日」の場としても多く利用され、親子三代でここに訪れる人も多いのだそう。一押しは鯉料理。定番の洗いは酢味噌とピリ辛のコチジャン入り酢味噌の両方で楽しむことができる。そのほか、鯉のユッケや鯉寿司(にぎり、巻き)などここならではの料理も見逃せない。隣接する「喫茶 木もれ陽」では自家焙煎コーヒーなどが楽しめる。
佐賀県西松浦郡有田町広瀬山甲2373-4
0955-46-3617
https://ryusenso.jp/ryusenso/


MARUBUN SHOP & BAKERY CAFE
「究極のラーメン鉢」で有名な「まるぶん」が運営するベーカリーカフェ。食と有田の陶磁器の関係を体感できる場として2022年12月にリニューアルオープンした。
佐賀県西松浦郡有田町赤坂丙2351-169
0955-43-2352
https://www.marubun-arita.co.jp


ARITA PORCELAIN LAB
「弥左ヱ⾨窯」から⽣まれたモダンでラグジュアリーなライフスタイルを提案するブランド「ARITA PORCELAIN LAB」の器でランチやスイーツが味わえるカフェ。
佐賀県西松浦郡有田町上幸平1-11-3
0955-29-8079
https://aritaporcelainlab.com


オーベルジュ使いができる有田の宿

福岡から有田に訪れる時、あまり宿泊を考える人はいない。片道1時間30分程度で行き来できる距離感が宿を意識しない主な原因だと推測できるのだが、有田を一泊二日で楽しむという提案をあえてしたい。なぜなら有田にも素晴らしい宿泊施設が存在しているからだ。

まず一軒目は1日3組限定で宿泊できる「宿坊心月」。こちらの宿は1組1棟貸で宿泊するため、まるで別荘のように利用できる。客室は、2階建ての開放的な空間が魅力の「天宮(てんきゅう)」、伝統的な平面形式である四間取りの構成を採用した「曙」、段差のないバリアフリーを意識した「暁」の3種あり、それぞれに天然温泉が引かれている。また、「心休まるひととき」をコンセプトに作られる客室にはこだわりが満載。例えば、1日の疲れを癒すベッドには電気を帯電させない金属のスプリング不使用のマットレスを採用し、風も音もない冷暖房システム「F―CON」を導入している。さらに有田を代表する日本料理店「保名(やすな)」が運営ということもあり、料理のクオリティも高い。有田で贅沢な一日を過ごすなら選択肢に入れたい宿の一つとなるはず。

もっと自宅のような感覚で宿泊したいという方には、約2万坪もの敷地に日用食器、贈答品、業務用食器、高級美術品などの陶磁器を扱う22の店舗が軒を連ねる「アリタセラ」内の宿泊施設「arita huis(アリタハウス)」がおすすめ。こちらもレストランに併設した宿泊施設で、シンプルでモダンな部屋で寛ぎの時間を過ごすことができる。

宿坊 心月
この宿は、1972年に創業した日本料理店「保名」が地場の特性を生かした温泉付き戸建てで展開する一日三組限定の宿坊で、和のモダンデザインや木や漆喰、珪藻土による自然の快適性にこだわった三棟の宿泊施設が用意されている。天然温泉に浸りながらゆっくりとした時間を過ごせるだけでなく、老舗の日本料理店による目福口福の料理も味わえるのが魅力。また各部屋には骨董価値のある美術品や一枚板と陶磁器を融合させたオリジナルのローテーブルといった有田らしい演出が施されている。有田の食と温泉、そして美しい器を堪能して、疲れたカラダをリトリートしてみてはいかが。
佐賀県西松浦郡有田町本町丙799-1
0955-42-2733
https://shukubo-shingetsu.jp


arita huis
「あなたの帰る場所になる」をコンセプトに、2018年に誕生した宿泊施設で、ここに訪れる人々に磁器発祥の地である有田を伝えるためのクリエイティブプラットフォームとしても活用されている。施設内には10室の客室と臨場感あるオープンキッチンを備えた42席ダイニングがあり、有田の器と有田の食を楽しむ場となっている。客室はフラットタイプとメゾネットタイプの2種類があり、それぞれツインベッドルームとダブルベットルームを用意。シンプルで洗練された空間が印象的で、淹れたてのコーヒーや嬉野茶も客室で味わえる。佐賀産の野菜たっぷりの特製モーニングプレートは宿泊者専用のサービス。
佐賀県西松浦郡有田町赤坂丙2351-169
0955-25-8018
https://aritahuis.com


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