高性能スポーツモデルRS e-tronGTに続き、先日発表されたばかりのQ4 e-tronでは600万円を切るプライス設定を行うなど、EVモデルの普及に向けた攻勢を強めるアウディ。そんな中、一昨年に取材を行なった元祖（？）e-tronと、再び対面する機会に恵まれた。自他共に認める真性アナログ人間の筆者にとって、数々の先進技術を満載したe-tronはまさに異次元級の未来カー。前回は操縦方法に慣れるだけでイッパイイッパイだったが、今回は二度目ということで、ほんの少しだけ心のゆとりを持って接することができた。

前回は国内上陸したばかりのe-tron スポーツバックだったが、今回用意されたのはルーフがテールエンドまで水平に延びた、SUVタイプのe-tron。アウディのみならずメルセデスGLEやBMW-X6など、ヨーロッパのプレミアムカーブランドの間では、いわゆるSUVクーペというボディ形状は一つの定番にもなっているようだが、正直、第一印象はオーソドックスなSUVタイプ（正式にはSUVの呼称は付かず、単に「アウディe-tron」となる）の方が視覚的にしっくりと馴染んだ。もっとも、これはあくまで個人の好みであり、決してどちらが優れているか否か、というハナシではない。

　早速、シャムベージュメタリックという上品なカラーに彩られた車体に乗り込み、試乗に出発。前回のe-tron55スポーツバックは前後のモーターを合わせた総出力が300kw（ps換算で約408馬力）とされていたが、今回のe-tron50は230kw（約313馬力）と、カタログ上ではマイルド志向の設定が行われている。
　しかし、実際のフィーリングは十分過ぎるほど力強く、日常シーンにおいて数値に表記されているほどの差を感じることは、ほとんど無いハズ。今回はゆっくり時間を取って郊外まで足を伸ばしてみたが、アップダウンが続く峠道でも走りは滑らか。走行特性を任意に設定可能なアウディドライブセレクトをオートにしておけば、Sラインに標準装備されたアダプティブエアサスペンション・スポーツが減衰力を適切にコントロールし、コーナリング時のロールも抑制。取材車両にはオプションの21インチホイールと45扁平のロープロファイルタイヤが組み合わされていたが、不快な突き上げや硬さは感じられず、終始快適なドライブを楽しみことができた。
　前回のe-tronスポーツバックは短時間の試乗だったにも関わらず、「電気もアリかも？」と思った筆者だが、今回じっくり長距離を乗り込んでみて、その感はより強いものとなった。同時に、ラグジュアリークラスを中心とした電動化の波は、今後ますます大きくなって来るだろうと、再認識させられた次第だ。

アウディ　e-tron 50クワトロ Sライン
全長×全幅×全高（mm） 4900×1935×1630
ホイールベース(mm) 2930
車両重量　2430kg
乗車定員　５名
駆動用バッテリー　リチウム・イオン
総電力量　71kwh
最高出力　230kw
最大トルク 540Nm
トランスミッション 1速固定式
サスペンション　前／後　ウィッシュボーン式
一充電走行距離（WLTCモード）　335km
車両本体価格　¥11,100,000