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『宇宙の終わりに何が起こるのか』著:ケイティ・マック
本著の原題は、『THE END OF EVERYTHING』。
つまり、万物すべての終わりとはどんな事態なのか?という話し。
ビッグバンによる宇宙の誕生についてではなく、宇宙の終わりについてか・・・、と思い手にとってみたらこれが面白い。
本書は、このような書き出しから始まる。
世界はどのように終わるのかという疑問をめぐっては、歴史を通して、詩人や哲学者たちがさまざまに考え抜き、議論を交わしてきた。もちろん、私たちはいま、科学のおかげでその答えを知っている。火で終わるのだ。間違いない、火である。今後50億年ほどのうちに、太陽は膨張して赤色巨星となり、水星は、そしておそらく金星も、軌道全体が呑み込まれるだろうし、地球はマグマで覆われ、生物など皆無の、ただ黒焦げの岩になってしまうだろう。(中略)そのようなわけで、答えは火だ。
では、宇宙はどのように終わるのか?
現代の最先端物理学、宇宙科学の分野では宇宙の終わりについて5つのシナリオが予見できるという。ほぼこの5つで決まり。と考えられているらしい。
本書は、その5つの終わりについての解説がなされている。
[終末シナリオ1]
ビッグクランチ。宇宙が急激な収縮を起こし、つぶれて終わる。
そもそも宇宙が膨張を続けているのか、ある時期から収縮が始まるのかは結論にいたってない。1960年頃までは収縮論が優位だったという。
[終末シナリオ2]
熱敵死。膨張の末に、あらゆる活動が停止する。
宇宙の膨張によって私たちのいる天の川銀河やアンドロメダ銀河が合体し燃えかすとなる。すべての超銀河は数億年から数兆年かけて燃え尽きる。その後、永久に存在するといわれていたブラックホールが蒸発し、すべてが終わる。
[終末シナリオ3]
ビッグクリップ。ファントムエネルギーによって急膨張し、ズタズタに引き裂かれる。
宇宙で最も優勢な成分であると同時にその正体が不確かなダークエネルギーが起こすと突然で劇的な終焉は、実在の物質の構造をズタズタに破壊し終わる。
[終末シナリオ4]
真空崩壊。「真空の泡」に包まれて完全消滅する突然死。
真空崩壊の直前にあなたは足元からなくなっていく。その時にあなたの脳が「自分の足を見ている」と判断する時間が2〜3ノナ秒。しかし、あなたが心配することは何もない。まず、真空崩壊が起こることを止める手段はない。そもそも起こりそうだというのも知りえない。さらに痛くはなさそうだということ。さらに、あなたがいなくなって悲しむ人も同時にいなくなるわけだし。心配する必要が何もない。
[終末シナリオ5]
ビッグバウンズ。「特異点」で跳ね返り、収縮と膨張を何度も繰り返す。
あなたが「パンッ!!」と両手をうちあわせたとしてそこですべてのものが破壊され私たちの宇宙は崩壊するとする。その後、新たなビッグバンが生み出される。どちらの宇宙も再び高温期に戻り、プラズマの業火に満たされる。その生まれ変わった空間は、それまでの名残などまったくない。
訳者の吉田三知世の解説のとおり、著者のケイティ・マックは現在、ノースカロライナ州立大学の物理学科で助教を勤め、研究と合わせて、地域社会と科学者のつながりを育む活動や、Twitterでは、ジェンダーや人種差別に対する意見も積極的に発信している。今日の最高の科学コミュニケーターの一人といって間違いない。
『宇宙の終わりに何が起こるのか』は、アインシュタインやホーキングなどのスター物理学者から現代最先端の研究者の仕事が整理され、専門的な議論と一般読者への配慮が行き届いた一級の宇宙論として読み応えがある一冊だ。
最終章には、この研究に挑む研究者たちがそもそも何十億年、何兆年先の宇宙の行く末を複雑な計算式と人間の叡智を総動員し解明しなければいけないのか?そのモチベーションとはどこにあるのか?という純粋な問いも明示される。
本書は、ロマンという一言では済まされない人類の知への意志とその痕跡を追体験できる。その意味でも一読に値する貴重な読書体験だ。
INFORMATION
タイトル
宇宙の終わりに何が起こるのか
著者
ケイティ・マック
翻訳
吉田三知世
価格
1,980円(本体1,800円)
ISBN
978-4-06-517479-1
出版社
講談社