オーベルジュで最も注目されるのはダイニング。オーベルジュとは、シェフがその土地の食材を使って腕を振るう宿泊施設を備えたレストランを意味することから、来訪者は料理を期待して訪れます。つまり、「御宿 富久千代」の成功は料理長にかかっているといっても過言ではありません。

そんな大役を担っているのが西村卓馬料理長。西村料理長は現在28歳と業界では若手ですが、専門学校を卒業後、東京を代表する和食店「神楽坂 石かわ」で5年ほど修行し、その後福岡に戻り、フランスでミシュラン一つ星を獲得した吉武広樹シェフが展開する「Restaurant Sola」でさまざまなジャンルの料理に触れるなど経験値は申し分ありません。

そんな西村氏が料理長を引き受けた当時の心境を「私が『石かわ』で修行していたこともあり、いつかは和食をしたいと考えていたことと、『Sola』の吉武シェフも後押ししてくださったので、自分でも挑戦するチャンスということで引き受けました」と話してくれました。

オーベルジュの魅力といえば、やはり地の素材を使った料理。こちらでも地元佐賀や九州を中心としたこだわりの食材を使う和食ベースの料理を楽しむことができます。料理は13品前後で、コースのみの提供。旬の素材を使った料理が、少しずつたっぷりと味わえるのがうれしい限りです。料理の内容はおよそ1ヶ月半毎に変わりますが、仕入れの状況等で予告なく変更することもあるので、そういったライブ感も楽しんでほしいと西村料理長は話します。

また、オプションで追加できる鍋島ペアリングもこちらならではのサービスの一つ。9種の鍋島を料理に合わせてペアリングするこのプランは、毎回杜氏と料理長が相談しながら作るのだそう。幅広い味わいの鍋島をどう料理と合わせるのか、そして鍋島がどのように地の素材の味を引き出すのか、ぜひ体験してください。なお、宿泊者は特別に鍋島を3本まで購入できるので、ペアリングでお気に入りを見つけるのもオススメです。

さらに注目してほしいのは器。佐賀といえば焼き物の町としても有名ですが、唐津焼や有田焼といった佐賀の窯元の作品はもちろん、志野焼や薩摩切子、輪島塗りなど各地から取り寄せた良品にも触れることができます。また、矢野直人や中村清吾などの次世代を担う作家の作品も多く採用。新進気鋭の作家との出会いにも期待が高まります。