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各国の「憲法改正」の実態と規範的意義を明らかにした『「憲法改正」の比較政治学』(弘文堂・2016年)から4年。その姉妹篇となる本書『統治のデザイン』は、これからの日本の憲法論議の本丸となるべき「統治機構」にフォーカス。各分野の第一線で活躍する著者陣が、読者とともに考えます。
『統治のデザイン』
著者:駒村圭吾・待鳥聡史/編
日本国憲法体制は、先にも述べたように、1990年代以降の諸改革によって大きな変容を経験した。戦後日本の代議制民主主義の根幹をなす根幹的政治制度が変革され、実質的意味の憲法の改正がなされたのである。それが具体的にどのような変革だったのかを改めて確認することが本書の第一の意義だと言えよう。さらに、大規模な変革を行っても、なお変わらないまま残されている領域、変化が不十分なままにとどまっている領域なども少なくない。それを明らかにするとともに、さらなる変革が必要だとすればその方向性を提示することが、本書の第二の意義である。【本文より】
90年代以来の政治改革は、憲法の明文改正こそなかったものの、選挙や内閣の制度変更(法改正)を通じて、日本の統治機構を大きく変えたと評価されている。
その成果として2009年の民主党政権樹立があり、また同じ効果として、2012年に再び自民党が政権交代を実現し、安倍一強といわれた安定政権を可能にしたのもまた、統治機構改革の帰結とする見解が広く共有されている。
本書は、この30年ほどの法改正によって積み重ねられてきた制度変更が、憲法に照らしてどのような意味を持つのかを確認しながら、さらにこのあと必要な制度変更を重ねていくうえで、憲法との関係をどのように整理すべきなのか、あるいは憲法の明文改正が必要になるのか否かについて、政治学と憲法学の両面から検討する論考をまとめたものである。
政治学からは、現在の政治状況に潜む課題を解決するための制度改革が積極的に提起され、中には憲法改正が必要とする見解も少なくない。他方、憲法学からは、多くの改革案が日本国憲法の条文に反する内容ではないと確認されるとともに、憲法改正が必要な事例について例示がある。つまり、憲法を改正しなくてもここまではできる/この先は憲法改正が必要だと「場合分け」されていく。
憲法論議といえば「9条」を中心に全く立場の異なる意見が衝突を繰り返し延々と進展しない印象をもって敬遠する向きもあるだろう。しかし本書を読めば、最先端の学術研究を踏まえた個別具体的な憲法論が現にあり、よりよい政治制度を設計するための多角的な検証作業が着々と進められていることに頼もしさを感じるのではないだろうか。無論、学問とは元来そういうものであるのだが、高度な理論や専門用語を知らなくても読める程度に編集された本書は、専門外の読者が学問の果実を垣間見るのにちょうどよい。
著者プロフィール
駒村圭吾
慶應義塾大学法学部教授(2020年5月現在)
待鳥聡史
京都大学法学部教授(2020年5月現在)