浅山太一

何らかのマイノリティであることを自覚する人すべてに届く言葉がここにある。

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リブロプラス 野上由人

「内側から見る創価学会と公明党」著:浅山太一 社会学の新鋭にして創価学会員の著者が、緻密な資料分析をもとに解き明かす!ご存知、リブロプラス・野上由人の明瞭な解説です。

「内側から見る創価学会と公明党」
 著者:浅山太一

はじめにカミングアウトするが、私は創価学会会員である。出身大学は創価大学だし、出身高校は関西創価学園だ。別にゲイを論じる人間がゲイである必要はないし、暴走族の研究者が元ヤンである必要もない。ただ、私は創価学会会員である。生まれたときからずっと。たぶんこれからもそうだ。(中略)私は本書において、社会と学会の双方が「創価学会と公明党というテーマ」を共に論じるための足場を構築することを目指す。私はこの実践に人生をかける。もう決めている。
【本文より】

「切実な本」という言い方がある。
東京・荻窪で書店「Title」を営む辻山良雄氏が言い出した。
〈最近思うことは、「切実な本」こそが売れているという事です。「真面目な本」と言ってもいいかもしれません。著者が書くしかなかった、自らの底と向き合い、編集者がその想いを汲み取るしかるべき形で包み、それを丁寧な販促で伝えていく。マーケティングの発想からは、そうした本は生まれない。マーケティングから売れる本の何が良くないかと言えば、必ず違う似たような本に取って変わられるからです。言ってみれば「替えがきく」という事なので。本は、元は一冊一冊が「替えがきかない」はず。替えがきかない「切実な本」にこそ、人の興味はあると思います〉
(Twitter @Title_booksより)。

これを受けて、「切実な本」フェアを展開した書店もある。
例えば、植本一子『家族最後の日』、岸政彦『ビニール傘』、上間陽子『裸足で逃げる』、永田カビ『さびしすぎてレズ風俗へ行きましたレポ』、こだま『夫のちんぽが入らない』等が挙げられる。

そのような括り方を是とするならば、本書も「切実な本」のリストに加えられるべきだろう。

浅山太一

著者は、創価大学大学院で社会学を学び、その後、書店や出版社に勤めながら研究を続け、今春から立命館大学大学院に転入する30代の研究者であり、また、生後2か月で入会してから現在に至るまでずっと創価学会員であって、今後も退会の予定はないという。

2015年、所謂「安保法案」が国会で審議されていた夏、「日本国憲法を勉強する創価学会員のつどい」を企画して、憲法学者の木村草太を講師に呼んだのが、著者だった。

公明党は、この法案の条文作りに深く関わり、衆参両院で賛成するのだが、「平和の党」をアイデンティティとするはずの公明党に対して、法案に反対する立場から批判や疑問が投げかけられたのは当然だった。
なぜ公明党は、自民党といっしょになって集団的自衛権を容認するような法案を推進するのか。このまま進めば、憲法9条の改正にも公明党は賛成するのではないか。

本書は、そのような問いに対して、創価学会内部の論理や力学を分析することによって一定の回答をなす「創価学会スタディーズ」の本である。
宗教上の教義や政策の内容に踏み込んで評価するのではなく、まず創価学会というコミュニティ内部でどのような論理が会員を動かしているのか、その実態を明らかにする。「内側から」ならではの貴重な資料である。

加えて、創価学会員の全員が、公明党の政策や法案への賛否に全面的に賛同できるわけではない事実を踏まえ、コミュニティ内部における政治的自由の保障について、シリアスな問題提起をしている。
この「切実さ」は、本文を読んで確かめてほしい。
政治や宗教への関心ばかりでなく、何らかのマイノリティであることを自覚する人すべてに届く言葉がここにある。

このテキストは、2018年3月発刊の雑誌mutoに掲載されたものです。

著者プロフィール

浅山 太一
1983年生まれ。創価大学大学院文学研究科社会学専攻博士前期課程修了。書店員を経て、現在は出版社に勤務しながら、創価学会をめぐる社会学を研究している。戦後の日本社会と創価学会について論じたエッセイ「創価学会と会社」は、公開1ヶ月で6万ビューを突破した。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

Information

書籍名

内側から見る創価学会と公明党

著者名

浅山太一

出版社

ディスカヴァー・トゥエンティワン

価格

1,000(税別)

発売日

2017年12月

ISBNコード

9784799322017

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