住む憧れ「グランドメゾン」の人気の理由。
世界的なアートディレクター、デザイナーとして時代を切り開き活躍した、石岡瑛子(1938-2012)の世界初の大規模な回顧展が東京都現代美術館で開催中。時代を画した初期の広告キャンペーンから、映画、オペラ、演劇、オリンピックのプロジェクトなど、その唯一無二の個性と情熱が刻印された仕事を総覧します。
『石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか』
「血がデザインできるか、汗がデザインできるか、涙がデザインできるか。
別の言い方をするならば、「感情をデザインできるか」ということです。
私の中の熱気を、観客にデザインというボキャブラリーでどのように伝えることができるだろう。
いつもそのように考えているわけです。」
石岡瑛子(世界グラフィックデザイン会議での講演より 2003年)
マイルス・デイヴィスのアルバム『TUTU』のジャケットのデザイン、フランシス・フォード・コッポラの映画『ドラキュラ』の衣装デザイン、北京オリンピックの開会式の衣装デザインなど、資生堂やパルコの広告から始まり、映画、オペラ、演劇、サーカス、ミュージック・ビデオなど世界をまたにかけて時代を切り開いたアートディレクター、デザイナーである石岡瑛子(1938〜2012)の世界初となる大規模な回顧展、『石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか』が東京都現代美術館で開催されている。
石岡瑛子 1983年 Photo by Robert Mapplethorpe ©Robert Mapplethorpe Foundation. Used by permission.
1938年東京都生まれ。アートディレクター、デザイナー。東京藝術大学美術学部を卒業後、資生堂に入社。社会現象となったサマー・キャンペーン(1966)を手がけ頭角を現す。独立後もパルコ、角川書店などの数々の歴史的な広告を手がける。1980年代初頭に拠点をニューヨークに移し、映画、オペラ、サーカス、演劇、ミュージック・ビデオなど、多岐にわたる分野で活躍。マイルス・デイヴィス『TUTU』のジャケット・デザインでグラミー賞受賞(1987)、映画『ドラキュラ』の衣装でアカデミー賞衣装デザイン賞受賞(1993)。2008年北京オリンピック開会式では衣装デザインを担当した。
石岡瑛子の仕事
石岡瑛子の仕事は、マイルスやコッポラの他、レニ・リーフェンシュタール、ビョーク、ターセム・シンら名だたる表現者たちとの緊張感に満ちたコラボレーションの連続で生み出されてきた。
石岡瑛子 『北京夏季オリンピック開会式』 (チャン・イーモウ演出、2008年)衣装デザイン ©2008 /Comité International Olympique(CIO) / HUET, John
この大回顧展、展示構成は、3つに分けられている。
1. Timeless:時代をデザインする
ジェンダー、国境、民族といった既存の枠組みの刷新、新しい生き方の提案を、ヴィジュアルな言語から社会に投げかけた石岡瑛子。グラフィック、エディトリアル、プロダクト等のデザインを通して、1960年代の高度経済成長期から80年代に至る、消費行動を通した日本大衆文化の成熟を辿る。
[Projects:資生堂、角川書店、パルコ広告キャンペーン(ポスター、CM1960s-80s) 、角川書店『野性時代』(1974-1978雑誌) ほか]
石岡瑛子 ポスター『西洋は東洋を着こなせるか』(パルコ、1979 年) アートディレクション
2. Fearless:出会いをデザインする
1980年代半ば以降、石岡瑛子は、クリエイターたちとの新たな出会いによって、世界へと活動の場を広げるとともに、グラフィックデザイン、アートディレクション、衣装デザインと、表現領域を超えていく。エンターテイメントという巨大な産業のなかで個人のクリエーションのアイデンティティをいかに保ち、オリジナリティを発揮するかという問いに向き合いながら、コラボレーションによるデザインの可能性を拓いていく。
[Projects:レニ・リーフェンシュタールとのコラボレーション(展覧会、書籍など1980/1991) 、マイルス・デイヴィス『TUTU』(レコード・アルバム1986)、『M.バタフライ』(演劇1988)、『忠臣蔵』(オペラ1997)、『ミシマ―ア・ライフ・イン・フォー・チャプターズ』(映画1985)、『ドラキュラ』(映画1992) ほか]
石岡瑛子 映画『ミシマ―ア・ライフ・イン・フォー・チャプターズ』(ポール・シュレイダー監督、1985 年) プロダクションデザイン Mishima ©Zoetrope Corp. 2000. All Rights Reserved. / ©Sukita
3. Borderless:未知をデザインする
オペラや映画、サーカスのコスチュームやオリンピックのユニフォームを通して、身体を拡張し、民族、時代、地域などの個別的な属性を乗り越えた、未知の視覚領域をデザインしていく仕事を総覧する。永遠性、再生、夢、冒険といった普遍的なテーマを足掛かりに、人間の可能性をどこまでも拡張していく後半生の仕事は、常に新たな領域へと果敢に越境し続けた石岡自身の人生と重ねられる。
[Projects : 『ザ・セル』(映画2000)、『落下の王国』(映画2006)、グレイス・ジョーンズ『ハリケーン・ツアー』(コンサート・ツアー2009)、シルク・ドゥ・ソレイユ『ヴァレカイ』(コンテンポラリー・サーカス2002)、ビョーク『コクーン』(ミュージック・ビデオ2001)、ソルトレイクシティオリンピック(ユニフォーム2002)、北京オリンピック(開会式2008)、『ニーベルングの指環』(オペラ 1998-1999)、『白雪姫と鏡の女王』(映画2012)ほか]
石岡瑛子 コンテンポラリー・サーカス『ヴァレカイ』 (シルク・ドゥ・ソレイユ、2002 年)衣装デザイン
Director: Dominic Champagne /
Director of creation: Andrew Watson /
Set designer: Stéphane Roy / Courtesy of Cirque du Soleil
石岡瑛子 映画『白雪姫と鏡の女王』 (ターセム・シン監督、2012 年)衣装デザイン
©2012-2020 UV RML Films dba Relativity Media. All Rights Reserved.
『石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか』展では、集団制作の中で個のクリエイティビティをいかに発揮するかに賭けた「石岡瑛子の方法」をデザインのプロセスを示す膨大な資料とともに紹介し、その秘密に迫る。
Information
展覧会名
石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか
会期
2020年11月14日(土)〜2021年2月14日(日)
休館日
月曜日(2021年1月11日は開館)、12月28日〜2021年1月1日、1月12日
開館時間
10:00〜18:00(展示室入場は閉館の30分前まで)
観覧料
一般1,800円
大学生・専門学校生・65歳以上1,300円
中高生700円
小学生以下無料
※予約優先チケットもあり
会場
東京都現代美術館 企画展示室 1F/地下2F
住所
東京都江東区三好4丁目1-1〈木場公園内〉
お問い合わせ
ハローダイヤル:03-5777-8600 (年中無休8:00-22:00)
または TEL:03-5245-4111 (代表)