住む憧れ「グランドメゾン」の人気の理由。
『10代のための読書地図』本の雑誌編集部
学校における「朝の読書」の浸透もあって、小学生の読書量は増加傾向にあると言われている。
事実、児童文庫や図鑑・学習漫画などの市場にはヒット作品が続発し、少子化社会でありながら児童書の売上は好調だ。しかし、中学、高校と年齢を重ねるに連れ、読書離れが進行する。要因は複合的だ。部活動や受験勉強など、他にしなければならないことが増える。昨今は、SNSや動画配信など、情報源も多元化している。好きな本ばかり読んで過ごしていられるのは子どもとリタイア後の高齢者くらいだと言われれば、その通りなのだろう。
ただ、中高生=10代の読書を支えるしくみは十分だっただろうか。小学生までは、書店に行けば「児童書」の売場がはっきりと区分けされていて、ほぼ対象年齢別に陳列されてもいるので、自分の読む本を探しやすい環境が整えられている。
しかし、小学校を卒業するころになると、途端に「大人といっしょ」の扱いで、書店全体の中から探さなければならない。自由といえば聞こえがよいが、あまりに放任ではなかったか。そのような反省がある。
2021年、10代を対象とした新しい出版レーベルがいくつも創刊された。
岩波書店の「岩波ジュニアスタートブックス」は中学生、小学館の「YouthBooks」は中高生、筑摩書房の「ちくまQブックス」は10代とターゲットを明確にしている。
直接のきっかけは、2019年に『こども六法』(弘文堂)が大ヒットしたことだったかもしれない。あのとき、10代向けの教養・ノンフィクション分野は供給が十分でなかったことを痛感した。2020年刊行の『こどもSDGs』(カンゼン)も売行好調で、その後も『こども統計学』や『こどもプログラミング』などシリーズが続いている。つまり、読みたい本が見つかれば、読まないわけではないのだ。供給側の責任は大きい。
本書は、そのような状況下で発売された「10代のための」ブックガイドだ。
評論家や書店員がさまざまな切り口で本と読書の魅力を伝える企画になっている。ただ名作を紹介するだけではない。「本の買い方・探し方」、「10代に売れてる本はなに?」、「いまどきの児童文庫売り場」などの記事を交えて、新しい世代を「読書界」に誘う狙いが窺える。
ちなみに、「いまどきの児童文庫売り場」を書いたのは、弊社リブロ光が丘店の店長。長きにわたり児童書担当を続けているベテランの目で、最新ヒット作の動向や、現場の状況を紹介している。
INFORMATION
書籍名
10代のための読書地図
著者
本の雑誌編集部
出版社
本の雑誌社
価格
1,890(税込)
発売日
2021年6月
ISBNコード
9784860114596