「NEUTRAL COFFEE」は福岡市営地下鉄空港線の藤崎駅から歩いて7分ほどの住宅地にある小さな自家焙煎店。2015年10月にオープンし、僕自身、開業時から利用させていただいています。その理由はいろいろありますが、通い始めたきっかけの一つは自宅から近かったこと。「そんな理由かい！」と言われてしまいそうですが、僕にとってコーヒーは日々の暮らしに欠かせないもの。やっぱり焙煎したてがおいしいので、大量に購入してストックしておくよりも、なくなったらすぐに買いに行ける、という距離感が大事だと思うのです。いろいろな街に自家焙煎店が存在しているのは、きっとそんな風に利用をしている常連さんがどの店にもついているからでしょう。

最初に飲んだ「NEUTRAL COFFEE」のハウスブレンドが好みの味だったのもポイントです。ほどよい酸味を感じる浅煎りのニュートラルブレンド（100g500円）と、豊かな余韻が残る深煎りのコクマロブレンド（100g580円）があり、ともに毎日飲むのにちょうどいい味わい。ハウスブレンド以外にもシングルオリジンがいくつかあり、その都度違う豆を試してみるのが楽しかったというのもあります。

今は月替りのブレンド、季節ごとのシーズナブルブレンドをはじめ、不定期で登場するシングルオリジンも用意し、常時12〜16種の豆がラインナップ。しかも、シングルオリジンはアフリカ、中南米、アジア、オセアニアなど、さまざまな地域・国の豆を扱っており、産地ごとの味わいの違いを楽しむことができます。実際、僕は毎回買う豆をできるだけ変えるようにしていて、最近では個性的なフレーバーを持つナチュラルプロセスの豆がお気に入り。

豆はすべてスペシャルティコーヒーで、販売価格は100g500円〜700円台が大半。店によっては100g900円台、なかには1000円オーバーの豆も増えていますが、店主の西岡 徹さんは「自分がもしお客だったらと考えたとき、あまり高い豆は手が出しづらいかな、と考えての価格帯です。COE（カップ・オブ・エクセレンス）といった品評会で受賞するような豆はもちろん素晴らしいのですが、毎日飲むことを考えるとちょっと違うのかな、って。でも、そういう豆を焙煎するのは楽しいでしょうし、お客様にも新たな提案にもなりますし、悩ましいですよね」と笑って話します。

そして、西岡さんの飾らない人柄もいい。いつ行っても笑顔で迎えてくれて、それでいて常連さん、一見さんの別け隔てもない。まさに“中立的で、どちらにも偏らない”、ニュートラルな人です。多くは語らない性格なので分かりづらいですが、コーヒーに対する姿勢はすごく熱い。毎月新たなブレンドを作ることもそうですし、焙煎のやり方もいろいろ試しているみたいで、すごく研究熱心だと感じます。

最近だと「自家製発酵珈琲」なるメニューを出しているのですが、これがまた斬新。カフェ限定メニューで、天然酵母のような優しいフレーバーが個性的なコーヒーでした。ちなみに、「自家製発酵珈琲」の豆売りは行っていないので、ご注意を。

僕は自家焙煎店に取材に行くと、必ずといっていいほど豆を買います。気になる店にもちょこちょこ行きますし、仕事の合間にコーヒーが飲みたくなったら、コンビニのカウンターコーヒーもよく利用します。ただ、やっぱり行きつけのコーヒー豆屋があるというのはいいものです。お気に入りの店のコーヒーは、きっと日々の暮らしをさらに豊かにしてくれるはずですよ。