2020/05/21

アート

「まぎれもない傑作なのだから」
第一回 大島渚賞受賞 小田香監督 最新作『セノーテ』

小田香。芸術、創造に対する正当な眼差しと強靭な意志を持ち、前進する人。
その姿をいつまでも見守り続けたいと思わせる映画監督がこの日本にいる。

審査委員長に坂本龍一(音楽家)、審査員に黒沢清(映画監督)、荒木啓子(PFFディレクター)を迎え、“映画の未来を拓き、日本から世界へ羽ばたこうとする才能を持つ映画監督に贈る賞”として、PFF(ぴあフィルムフェスティバル)より創設された「大島渚賞」。
この映えある第一回の受賞者が小田香監督に決定した。

セノーテ(洞窟内の泉) 映画の1シーン

今年3月10日に東京・丸ビルホールで行われた大島渚賞受賞式で審査委員長の坂本龍一は、「あらかじめ主催者から提出された候補作の中には大島渚の名前にふさわしい作品はなかった。常に国家、歴史、国境に翻弄された人々を描き、常識に立ち向かってきた大島渚の名にふさわしい人は誰かと考えた時に小田香さんしかいないと思い、僕の方から推薦させていただいた。『鉱 ARAGANE』も素晴らしかったが、新作『セノーテ』はその何倍も素晴らしかった。」と激賞している。

セノーテ(洞窟内の泉) 映画の1シーン

セノーテとは、メキシコ、ユカタン半島北部に点在する洞窟内の泉の総称。
かつてマヤ文明の時代、唯一の水源であり雨乞いの儀式のために生け贄が捧げられた場所でもあったと言われている。
現在もマヤにルーツを持つ人々がこの泉の近辺に暮らしている。

セノーテ(洞窟内の泉) 映画の1シーン
セノーテ(洞窟内の泉) 映画の1シーン
セノーテ(洞窟内の泉) 映画の1シーン

「水と洞窟と古い記憶(神話)についての映画をメキシコで撮る」という小田香の思いから始まったこの作品は、8mmフィルムカメラ、iphoneなどを駆使し撮影された。
監督自らがダイビングを学び、水中撮影に挑んだ映像は光と闇に遠い記憶がこだまし、いまもこの地に住む人々を写した画面からは集団的記憶や原風景が立ち上がる。

セノーテ(洞窟内の泉) 映画の1シーン

生け贄として何人もの少女が投げ込まれたという神話的な泉の底を、一瞬も動くことをやめぬキャメラが奥深くまで探ってみても、彼岸への通路かもしれない薄ぐらい拡がりが見えてくるばかりだ。
その穏やかなリズムを不意に立ちきる固定キャメラが、えもいわれぬほど素晴らしい何人もの男女の顔を画面に浮き上がらせる。
この転調をもっと見てみたい。
まぎれもない傑作なのだから。

蓮実重彦(映画評論家)

小田香 プロフィール1987年大阪府生まれ。フィルムメーカー。2011年、ホリンズ大学(米国)教養学部映画コースを修了。卒業制作である中編作品『ノイズが言うには』が、なら国際映画祭2011 NARA-wave部門で観客賞を受賞。東京国際LGBT映画祭など国内外の映画祭で上映。2013年、タル・ベーラが陣頭指揮するfilm.factory(3年間の映画制作博士課程)に第1期生として招聘され、2016年に同プログラム修了。2014年度ポーラ美術振興財団在外研究員。2015年、ボスニアの炭鉱を主題とした第一長編作品『鉱 ARAGANE』が山形国際ドキュメンタリー映画祭2017・アジア千波万波部門にて特別賞を受賞。その後、リスボン国際ドキュメンタリー映画際、マル・デル・プラタ国際映画祭などで上映。映画・映像を制作するプロセスの中で、「我々の人間性とはどういうもので、それがどこに向かっているのか」を探究する。

Information

作品名

セノーテ

監督・撮影・編集

小田香

企画

愛知芸術文化センター、シネ・ヴェンダバル、フィールドレイン

制作

愛知美術館

エグゼクティブ・プロデューサー

越後谷卓司

プロデューサー

マルタ・エルナイズ・ピダル、ホルヘ・ボラド、小田香

その他

2019年/メキシコ・日本/マヤ語・スペイン語/DCP/75分/配給:スリーピン
原題:TS’ONOT 英題:CENOTE (C) Oda Kaori
※6月より新宿K’s cinemaにてロードショー、順次全国公開予定

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