そろそろ左派は〈経済〉を語ろう

『そろそろ左派は〈経済〉を語ろう』レフト3.0の政治経済学

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リブロプラス 野上由人

日本のリベラル・左派の躓きの石は「経済」という下部構造の忘却にあった!アイデンティティ政治を超えて「経済にデモクラシーを」求めよう。バージョンアップせよ、これが左派の最新型だ!

そろそろ左派は〈経済〉を語ろう
著者:ブレイディみかこ、松尾匡、北田暁大

そういえば、最近、わたしの11歳の息子が連れ合いに「レフトとリベラルってどう違うの?」って訊いていたんですよ。そうしたら連れ合いが「リベラルは自由や平等や人権を訴える金持ち。レフトは自由と平等と人権を求める貧乏人」って説明していて(笑)なんて極端な言葉なんだと思って聞いていたら、彼は、「だからリベラルは規制緩和や民営化をするんだ」と言っていました。byブレイディみかこ【本文より】

大雑把に言えば、民主党は消えた年金問題で支持を集め、消費税増税でそれを手放した。
政権選択の最も重要な争点は、憲法でも原発でも安全保障でもなく、常に景気・経済・社会保障、つまり「お金」の問題である。
野党時代の自民党はそのことを十分に理解したうえで、民主党政権打倒の戦略を練った。その成果が「アベノミクス」である。
「アベノミクス」は金融緩和と財政支出で経済指標を好転させた。
伝統的な保守政権がお金を使わない「小さな政府」「緊縮財政」を志向するのに対して、安倍政権はお金をどんどん放出する「反緊縮」の政策を打ち出した。
安倍晋三は、「保守」と目される政治家だが、経済政策は「反緊縮」を選んで高い支持を得た。選挙の度に「経済」を前面に出して票を集め、選挙が終わると安保法制や共謀罪に取り組むのは、対抗勢力からみれば「狡い」ということになるのかもしれないが、野党時代の研究成果を踏まえた「巧い」成功法則なのだ。
 

そろそろ左派は〈経済〉を語ろう

世界的には、イギリス労働党のコービンや、フランス社会党のメランション、アメリカ民主党のサンダースといった〈左派〉の政治家が「反緊縮」を訴えて労働者階級や若年層の支持を集めている。日本では、これに相当する「反緊縮の〈左派〉」勢力がどうにも弱い。ましてや安倍政権を批判したいがために「反・反緊縮」つまり「緊縮」の側に立って論陣を張ってしまったら野党は二度と政権復帰できないだろう。憲法や原発もいいが、何より有権者にとって優先度の高い「経済」で幅広い支持を集める旗が必要でそれは「反緊縮」に他ならない。
これが本書の提言の概要である。

本書ではほとんど触れられていないが、例えば立憲民主党の枝野幸男は、かつて(まさに)「反・反緊縮」の論陣を張っていたが、近年、立場を変えた。
世界の〈左派〉の潮流に学んでのことだろう。政府支出を必要とする階層の支持を基盤に「下からの民主主義」を訴えるのであれば、「反緊縮」サイドから「アベノミクス」の弱点を指摘する必要がある。「右派に民衆の胃袋を握らせてはいけない」。
本書はその絶好の指南書だ。

このテキストは、2018年6月発刊の雑誌mutoに掲載されたものです。

著者プロフィール

ブレイディみかこ
イギリス・ブライトン在住の保育士・ライター・コラムニスト。 著書に『ヨーロッパ・コーリング』『THIS IS JAPAN』『子どもたちの階級闘争』『 労働者階級の反乱 』など、共著に『 保育園を呼ぶ声が聞こえる』などがある。

松尾匡
1964年石川県生まれ。 立命館大学経済学部教授。 専門は理論経済学。 著書に『 商人道ノスヽメ』『不況は人災です! 』『この経済政策が民主主義を救う』など、共著に『これからのマルクス経済学入門』『マルクスの使いみち』などがある。

北田暁大
1971年神奈川県生まれ。東京大学大学院情報学環教授。専門は社会学。著書に『広告の誕生』『広告都市・東京』『責任と正義』『嗤う日本の「ナショナリズム」』など、共著に『リベラル再起動のために』『現代ニッポン論壇事情』などがある。

Information

書籍名

そろそろ左派は〈経済〉を語ろう

著者名

ブレイディみかこ、松尾匡、北田暁大

出版社

亜紀書房

価格

1,700円(税別)

発売日

2018年5月

ISBNコード

9784750515441

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