世界と僕のあいだに

僕は15歳になろうとするお前にこの手紙を書いている。
『世界と僕のあいだに』タナハシ・コ-ツ

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リブロプラス 野上由人

本書でで全米図書賞を受賞し大ベストセラーとなった『世界と僕のあいだに』。現在のアメリカ社会を揺るがすブラックライブスマター運動にも通底するタナハシ・コーツの代表作です。

『世界と僕のあいだに』著:タナハシ・コ-ツ

トランプ大統領の支持層とされる「ラストベルト」(錆ついた工業地帯)の白人労働者が注目を集め、アメリカの格差問題がシンプルに経済格差、つまりお金の問題としてクロースアップされたことにより、一瞬、ほんの一瞬忘れかけた「人種」の問題をあらためて思い出させてくれたものとして、映画「ムーンライト」(アカデミー作品賞受賞)とともに、本書を挙げたい。
 

世界と僕のあいだに

著者は、現在アメリカで黒人問題のオピニオン・リーダーと目されるジャーナリスト。本書で全米図書賞、ピューリッツァー賞、全米批評家協会賞にノミネートされ、実際に全米図書賞(ノンフィクション部門)を受賞した。

翻訳は順序が逆になったが、本国アメリカでは2008年にデビュー作『美しき闘争』が発売され、2015年に本書が発売されている。前者は著者と父親の関係を描き、後者は著者から息子への手紙形式で書かれている。
著者を挟んで3代の黒人男性が背負った運命について、ときにコミカルに、ときにエモーショナルに語るこの連作は、オバマ政権下においてもなお厳しい黒人社会の現実を読者にあらためて印象付ける。

無論、アメリカ社会に特に詳しくない日本人であっても、映画や小説や報道を通じて、アメリカの人種差別、黒人が現代でもなお不当に劣位な環境に置かれている現実について、知らないわけではない。ただ、黒人の「肉体」に刻まれた運命の深さについて、私たちはほんとうに想像し尽くせているだろうか。
本書は、そのような問いを鋭く突き付ける。繰り返し登場する「肉体」という単語に、何度も揺さぶられる。

「オバマの時代」が終わり、これからのアメリカについて思いを馳せるとき、聞き逃したくない声。知らぬままでなくてよかったと思わせる力に満ちたメッセージだ。

このテキストは、2017年6月発刊の雑誌mutoに掲載されたものです。

著者プロフィール

タナハシ・コーツ(Ta-Nehisi Coates)
1975年、元ブラックパンサー党員のポール・コーツを父としてボルチモアに生まれる。名門ハワード大学を中退。 Atlantic 誌定期寄稿者。アメリカ黒人への補償を求める2014年のカヴァーストーリー “The Case for Reparations” でいくつもの賞を受ける。2008年に回想録 The Beautiful Struggle を出版。
2015年の本書 Between the World and Me は、全米図書賞を受賞、全米批評家協会賞・ピューリッツァー賞のファイナリスト。コーツ自身は、2015年にマッカーサー基金のジーニアス・グラントを受けている。しばしば「ジェームズ・ボールドウィンの再来」と称されるが、アフリカン・アメリカンの代表的知識人の一人として信頼を集めている。

Information

書籍名

世界と僕のあいだに

著者名

タナハシ・コ-ツ

価格

2,400円(税別)

発売日

2017年2月

ISBNコード

9784766423914