佐賀県主催のグルメイベント「USEUM SAGA」が今年も開催!

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葉山巧

2025年3月22日に佐賀市内のカフェ&ダイニングバー「La Pause(ラ・ポーズ)」を会場に開催された第6回「USEUM SAGA(ユージアムサガ)」をレポート。

毎年恒例の「さが桜マラソン2025」が実施された3月22日、佐賀市の路上はランナーと観客の放つ熱気で一杯でした。が、それとは別種の高揚感を漂わせていたのが、同じ市内にある「La Pause(ラ・ポーズ)」。このカフェ&ダイニングバーを会場に、第6回「USEUM SAGA(ユージアムサガ)が催されたのです。

これは佐賀県が2020年から取り組む「サガマリアージュ」主催のグルメイベント。「サガマリアージュ」とは、佐賀県が誇る食材や器を料理人と結びつけ、セミナーや研究会(ラボ)を通じて食材や器といった地域資源の磨き上げと県内料理人のスキルアップが目的のプロジェクトです。
その一環である「USEUM SAGA」は、佐賀と他県の料理人が共作したコースを客に振る舞うプレミアムなイベントで、今回は佐賀市のフレンチ「shokudo 欅」と、宮城県の中華店「松石」がタッグを組みます。実は初顔合わせの2店舗ですが、そこからどんな化学反応が生まれるのか興味が尽きません。

第6回「USEUM SAGA」の会場となった「La Pause(ラ・ポーズ)」

今回は21日夜と22日昼夜の計3回が実施され、各回20名のチケット(15,000円)は完売。僕は22日の昼の部に参加しました。まずは両店のシェフ、「欅」の寺田功さんと「松石」の松石翼さんの挨拶で幕を開けます。

お二人に意気込みを尋ねると──、
「ずっと妻と二人でやってきたので、こうしたイベントは初めて。でも今回のお誘いがあった時、今後の糧になる刺激や体験を得られるかもと思い参加させていただきました」(寺田さん)
「佐賀県とは無縁の人生でしたから、自分も県庁さんからの依頼に驚きましたね(笑)。でも器が大好きなので、この一大産地を訪ねてみたくて。こんな素敵な機会をありがとうございます」(松石さん)

かくして始まるコースは全10品。食材は佐賀県産に加え、松石さんの本拠地・宮城産と、出身地の山形産が使われます。どちらが何をどう使うのか、1カ月間何度もLINEでやり取りして決めたそうですよ。

「欅」の寺田功さん(写真上)と「松石」の松石翼さん(同下)

その1品目は、佐賀産黒アワビとエミューに、宮城産フカヒレを合わせた蒸しスープ。豪華食材の風味や食感が凝縮し、金星佐賀豚で取った出汁の深みも印象的な一品です。しかもこの器、人間国宝・14代今泉今右衛門作ではありませんか! そう、こうした器の逸品と触れ合えるのも「USEUM SAGA」の醍醐味。何しろMUSEUM(博物館)クラスの器を、USE(使うこと)に重きを置いたイベントなのですから。

佐賀産黒アワビとエミュー、宮城産フカヒレを合わせた蒸しスープ

その次は、「一番気合の入った料理です」と2人が口を揃える前菜6種盛り合わせ。右の3品が寺田さん、左の3品が松石さんの担当です。佐賀の食材で作ったラヴィオリに、仙台名物のずんだをイメージした豆ソースをかけるなど、互いの食文化への敬意と融合が生みだす世界観にワクワクさせられます。

「今回のテーマが“お花見”だったので豆皿に盛りました。弁当箱のような楽しさを感じてもらえたら」と寺田さん。名窯「柿右衛門窯」や気鋭の作家として注目を集める「健太郎窯」、若手の古川マアヤ氏まで、豆皿の方も新旧作家が揃い踏みです。また、それらを乗せるのは窯元で焼物を運ぶのに使う“皿板”で、料理にさらなる臨場感を与えていました。

豆皿に盛り付けされた前菜6種盛り合わせ

竹崎産牡蠣を用いた3品目でも、寺田さんと松石さんの競演が見られます。ゼリーの清涼感が包む寺田さんの生牡蠣に対し、松石さんは甘辛く煮て抜群の歯触りを表現。好対照のビジュアルも楽しい一皿でした。

その余韻も冷めぬ間に、「松石」名物の春巻きが続きます。具材は佐賀産の魚(ナベタン)、竹崎カニ、行者ニンニク、ブラッドオレンジ。異なる要素を巧みにまとめた複雑妙味はさすがの一言です。

牡蠣は右が寺田さん、左が松石さんの作

特製春巻き(下)は松石さんのスペシャリテ

驚くほど大ぶりの宮城産ホッキ貝は、寺田さんと奥様の久枝さんがフロアで“焼き”を実演。絶妙な火入れと佐賀産玉ねぎのブールブランソースで、貝特有の旨味と艶を引き出します。

それに負けじと松石さんも、面前で佐賀産桜鯛の調理を披露。熱々の出汁をかけて蒸した白身の淡い旨味がたまりません。鮮烈なアクセントを添える宮城産のセリも相性良し。山形のクラフトビールと一緒に堪能しました。

フロアで“焼き”を実演した宮城産ホッキ貝

佐賀産桜鯛

山形産・金華豚の肉料理は、繊細な絵付けが見事な14代今泉今右衛門の器で登場。野菜酵素に3日間漬け込んで火入れをした逸品で、酸味際立つ佐賀産ニンニクソースも効いています。

さらに、久枝さんと松石さんの奥様・晶子さんが一緒におにぎりを握る微笑ましい光景も。しかも山形産つや姫と芳醇な佐賀海苔の組み合わせが絶品で、よもや終盤で食欲が再燃するとは思いませんでした。「豚汁感覚でどうぞ」と出された、仙台牛のすじ肉、唐津産の魚、サフランで仕込んだスープも飲みごたえ満点です。

宮城産のセリを乗せた、山形産金華豚の肉料理

香り高い佐賀海苔が包む、山形産つや姫の絶品おにぎり

最後にほうじ茶のシャーベット、杏仁フロマージュブラン、野草茶が出され、惜しまれながらコースは終了。どれも食材への慈しみに満ち、自然の包容力を感じる料理たちでした。

ほうじ茶のシャーベット(上)と杏仁フロマージュブラン(下)

「寺田さんも僕も、生産者さんの“顔が見える食材”を使っているから優しい味になるのでしょう。絶対に食材の持ち味を生かすんだ!という気持ちが常に心にあるんです」と松石さん。初対面でも驚くほど息が合ったのは、同じ波長や理念を持つ“同士”だからかもしれません。「気に入った佐賀産食材もあったので、今後も寺田さんと情報交換しながらお付き合いできたらと思います」。

寺田さんも「松石さんから新しい知識を得たり、別の角度から調理を捉えたりと価値ある経験になりました」と達成感を得た模様。2日限りのコラボでしたが、こうした積み重ねが佐賀の食文化を底上げし、新たな花を咲かせるのでしょう。そんな旅路の記録でもある「USEUM SAGA」に、ぜひ皆さんも注目してみてください。

Chef’s Profile

寺田功さん/1976年長崎県生まれ。東京ステーションホテルに5年在籍後、フランス各地で本格的に研鑽を積む。帰国後、27歳で唐津市に「欅」をオープン。2019年に佐賀市へ移転し「shokudo 欅」としてリスタート。

松石翼さん/1982年山形県生まれ。仙台のホテルで17年間中華料理のシェフを務める。2022年「松石」をオープン。「全日本中国料理コンクール熱菜畜禽部門」で2013年に銀賞、2014年に金賞・農林水産大臣賞受賞。

サガマリアージュ推進協議会

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サガマリアージュとは、佐賀県の有益な資源である「食材」と「器」を「料理人」の感性で磨き上げ、佐賀の可能性を表現する料理を通して、新たな価値の創造・発信を目指す取り組み。「USEUM SAGA」はその一環となるプレミアムなレストランイベント。

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