新版画-進化系UKIYO-Eの美 日本橋高島屋

世界を魅了した川瀬巴水、吉田博、伊東深水らの「shin-hanga」約120点が日本橋高島屋に登場

公開日

muto編集部

版元・渡邊庄三郎(わたなべしょうざぶろう・1885〜1962年)のアイデアをもとに、伝統的な技術を用いながらも画家たちの新鮮な感覚を重視して生み出された「shin-hanga」はアメリカを中心に国内外で広くファンを獲得してきました。大正初年から昭和のはじめにかけて復興した「shin-hanga」約120点が、日本橋高島屋S.C. 本館8階ホールで展示されます。

川瀬巴水・吉田博・伊東深水らの世界を魅了した木版画が一堂する

千葉市美術館が誇る新版画コレクションから選りすぐった約120点で構成した展覧会。新版画最初期の初々しい傑作となる橋口五葉の《浴場の女》や伊東深水の《対鏡》から、川瀬巴水の情感豊かな日本風景、吉田博の精緻な外国風景、山村耕花や吉川観方による個性的な役者絵を経て、昭和初期のモガを鮮烈に描いた小早川清《近代時世粧》に至る、新版画の成立から発展形への歴史をたどることができる内容となっています。

美人・風景・役者の各ジャンルの花形作家たちの競演と、伝統技術の粋と革新的な表現の煌びやかな融合を、この展覧会で確かめてください。

川瀬巴水 《東京十二ヶ月 谷中の夕映》 1921年(大正10)年

『東京十二ヶ月』は、大正9年12月から翌年10月にかけての写生にもとづく連作です。12点が予定されていましたが、正円の4点と正方形の1点のみで終了しました。
《谷中の夕映》は、夕陽を受けてほの赤く輝く五重塔を描いています。巴水は、ちょうどスケッチを終えた時に鐘の音が響き渡り、思わず襟を正したと回想しています。

新版画-進化系UKIYO-Eの美 日本橋高島屋

東京十二ヶ月 谷中の夕映

吉田博《帆船 朝 瀬戸内海集》 1926年(大正15)年

吉田博は、大正10年に渡邊庄三郎のもとで《帆船》三部作(朝日・日中・夕日)を手がけましたが、関東大震災で版木のすべてと作品の大半を失いました。5年後、吉田は私家版において再びこの画題に取り組み、サイズをやや拡大して6点に展開しました。
版の絵であることを強く主張する渡邊版に対して、私家版では時間のヴァリエーションを増やしながらも色の明度や彩度の幅を狭めてより静謐な表現とし、色調や光のわずかな違いに視線を促すようです。

新版画-進化系UKIYO-Eの美 日本橋高島屋

帆船 朝 瀬戸内海集

伊東深水《対鏡》1916年(大正5)年

伊東深水の新版画第一作。原画を単純化して黒と赤、肌の白の三色が映える構成とし、陰影を表すかげ彫り(鋸歯状の刻み)を施しました。
特別に取り寄せた上質な紅を三、四度重ね、背景にはざら摺り(わざとバレンを傾けてその軌跡を見せる摺り)を大胆に入れるなど、摺りにも工夫が凝らされています。《対鏡》は、彫刀とばれんによる、肉筆ではない「版の絵」であることを前面に押し出し、作家が語る「黒髪と赤い長襦袢の間に覗いている襟足の美しさ」を存分に伝える名作となりました。

新版画-進化系UKIYO-Eの美 日本橋高島屋

対鏡

小早川清《近代時世粧ノ内-ほろ酔ひ》1930年(昭和5)年

『近代時世粧』は、昭和5年から翌年にかけて制作された、同時代の女性風俗を描く6点シリーズです。小早川清の描く女性には独特の際どさや生々しさがあり、本作でもその本領が発揮されています。
とりわけ著名な《ほろ酔ひ》は、断髪や肌を大胆に見せた洋服、煙草、指輪、カクテルといった当時のモダンガール(モガ)のアイテムをちりばめるとともに、描かれた女性の危うい心模様をリアルに感じさせ、それが本作を時代の肖像画としている理由と思われます。

新版画-進化系UKIYO-Eの美 日本橋高島屋

近代時世粧ノ内-ほろ酔ひ

橋口五葉《髪梳ける女》1920年(大正9)年

豊かに流れる黒髪の圧倒的な存在感や女性の清雅なたたずまいが印象的な、五葉の私家版を代表する1点。
モデルは五葉がよく描いた小平とみで、五葉はロセッティが描くような「象牙の首」の女性を後輩に探させ、美校でモデルをしていたとみを見出したとの逸話が残っています。本作の女性のポーズにもロセッティ《レディ・リリス》からの影響が指摘されていますが、表現自体は、写生を浮世絵の簡潔な墨線に融合・昇華したものといえるのではないでしょうか。

新版画-進化系UKIYO-Eの美 日本橋高島屋

髪梳ける女

開催概要

展覧会名

千葉市美術館所蔵 新版画ー進化系UKIYO-Eの美

会期

[日本橋高島屋S.C.]9月12日(日)まで
[大阪高島屋]9月15日(水)〜27日(月)

会場

[日本橋高島屋S.C.]東京都中央区日本橋2丁目4−1


[大阪高島屋]大阪市中央区難波5丁目1−5

入場時間

[日本橋高島屋S.C.]10:30〜19:00(午後19:30閉場) ※最終日9月12日(日)は午後17:30まで(18:00閉場)

[大阪高島屋]10:00〜18:30(午後19:00閉場) ※最終日9月27日(月)は午後16:30まで(17:00閉場)

※都合により変更になる場合がございます。最新の営業情報は開催店舗のホームページでご確認ください。

主催

日本経済新聞社

特別協力

千葉市美術館

入場券(税込)

前売券:一般800円/大学・高校生600円
当日券:一般1,000円/大学・高校生800円 中学生以下無料

※中学生以下、障がい者手帳・デジタル障がい者手帳をご提示いただいたご本人様ならびに同伴者1名様、タカシマヤプラチナデビットカード・タカシマヤカード《ゴールド》・タカシマヤ株主様ご優待カード・タカシマヤ友の会会員証をご提示いただいた方、ご招待券をお持ちのお客様は入場無料とさせていただきます。直接展覧会場入口へお越しください。
※会場の混雑状況により入場制限をさせていただく場合がございます。
※安全の為、小学生以下のおこさまは必ず保護者の方ご同伴でご入場ください。

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