ラクス・メディア・コレクティヴ

「ヨコハマトリエンナーレ2020」7月17日に開幕。
コロナ禍でも生身の芸術体験を!

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muto編集部

アーティスティック・ディレクター ラクス・メディア・コレクティヴ   撮影:田中雄一郎 写真提供:横浜トリエンナーレ組織委員会

インドのアーティスト集団「ラクス・メディア・コレクティヴ」を初の外国人ディレクターとして迎え注目される、3年に一度の現代アートの国際展「ヨコハマトリエンナーレ2020『AFTERGLOW―光の破片をつかまえる』」が7月17日開幕する。

「ヨコハマトリエンナーレ2020」7月17日に開幕

3年に一度開催する現代アートの国際展として2001年にスタートした『ヨコハマトリエンナーレ』。
国際的に活躍するアーティストの作品から新進のアーティストまで、広く国内外のアートの最新動向を紹介してきた。
コロナ禍の影響で当初の開催日から2週間の延期をへて7月17日の開催が決まった『ヨコハマトリエンナーレ2020』は、まもなく20年の節目を迎え、日本を代表するアートの祭典としてますます注目されている。

チェ・ジョンファ《フルーツ・ツリー》2001
撮影:加藤健写真 提供:横浜トリエンナーレ組織委員会

Eva-Fabregas

エヴァ・ファブレガス
《ポンピング》2019

ラクス・メディア・コレクティブ

ジョコ・アヴィアント《善と悪の境界はひどく縮れている》2017
ヨコハマトリエンナーレ2017展示風景
撮影:加藤健写真 提供:横浜トリエンナーレ組織委員会

特に今年、内外から注目を集めているのは、インド・ニューデリーを拠点に活躍するラクス・メディア・コレクティヴ(Raqs Media Collective)がアーティスティック・ディレクターを務めることだろう。
 アーティスティック・ディレクターの選考に関しては、第7回横浜トリエンナーレAD選考委員会(委員長:浅田彰)において、14名の推薦者から 21組の候補者が推薦され、逢坂恵理子・蔵屋美香・椹木野衣・鷲田清一そして浅田彰の5名の選考委員が それらの候補の中から2段階にわたる選考を行なった。(書類選考で候補を4組に絞り込み、次に面接によって最終選考を行なった)

アーティスティック・ディレクター/ラクス・メディア・コレクティヴ

ラクス・メディア・コレクティヴ

アーティスティック・ディレクター
ラクス・メディア・コレクティヴ
撮影:田中雄一郎 写真提供:横浜トリエンナーレ組織委員会

アーティスティック・ディレクターに就任したラクス・メディア・コレクティヴとは、ジーベシュ・バグチ(1965年生)、モニカ・ナルラ(1969年生)、シュッダブラタ・セーングプタ(1968年生)のニューデリー生まれの女性1名・男性2名により結成されたアーティスト集団だ。
彼らは、ニューデリーにあるジャミア・ミリア・イスラミア大学のマス・コミュニケーション修士課程の同窓生。
「Raqs」とは、ペルシャ語、アラビア語、ウルドゥー語で、回転運動や旋回舞踊によって到達するある種の覚醒状態や、立ち現れてくる存在との一体感を表す言葉。
彼らはこうした状態を思考的な運動と捉え、世界や時間の概念を絶え間なく問い、精力的に思索し続ける「動的熟考 / kinetic contemplation (ラクスによる造語)」を活動の核としてきた。
彼らの実践は、アート作品の制作、展覧会のキュレ―ション(企画)、パフォーマンスのプロデュース、執筆など多岐に渡り、表現形式もメディアも多様だ。
また、建築家、コンピュータ・プログラマー、ライター、キュレーター、舞台演出家ら専門家や市民とのコラボレーションも豊富で、多面的な作品やプロジェクトを多数実現している。

キュレーションの特徴は、「ソース」の共有

今回の『ヨコハマトリエンナーレ2020』でのラクス・メディア・コレクティヴが手がけるキュレーションの特徴は、「ソース」というタイトルの源ともいえる素材を出発点とすることだ。
「ソース」とは、市井の人々の生活の記録や手記、中世の写本や文献、科学の知識など時代や文化的背景の異なる実在の人物の生き方や考え方を例示する資料や、会話のネタなど思考の素材となるものを指す。
ラクスはこれを自分たちが思考の過程にある開幕前の段階からアーティストや関係者と共有することによって、周囲の人を巻き込みながら展覧会の世界観を作り出していこうと試みる。
7月の開催に先駆け昨年末に「エピソード00 ソースの共有」と名付けて開催されたプレイベントでは、ヨコハマトリエンナーレ2020の「ソース」となる5つの資料を収録した『ソースブック』が公開された。(この『ソースブック』は、ヨコハマトリエンナーレのホームページで公開されている)新宅加奈子、田村友一郎、イヴァナ・フランケ、ランティアン・シィエ、イシャム・ベラダらがパフォーマンスを披露しラスクの世界観の一端を共有した。

 このように、これまでのアートイベントとは一線を画すようなアプローチによって進行するアートの試みは、行動と知性を伴いそこに集う人々を巻き込んだ「場」を作りながら予測不可能な終着点に向かっているようで実に興味深い。
人類に必要なアートのあり方、アーティストの存在が問われるいまこそ、叡智を持つ人類の生存に不可欠なアートの力を信じたい。

なお、新型コロナウィルスの感染予防対策としてチケットは日時指定の事前予約制など、様々な対応が実施される。
詳しくは、ヨコハマ トリエンナーレのHPでご確認を。HPはコチラ

タイトル

ヨコハマトリエンナーレ2020「AFTERGLOW―光の破片をつかまえる」

会期

2020年7月17日(金)-10月11日(日)
毎週木曜日休場(7/23、8/13、10/8を除く)、開場日数78日

会場

横浜美術館 横浜市西区みなとみらい3-4-1
プロット48 横浜市西区みなとみらい4-3-1(みなとみらい21中央地区48街区)
*下記会場でも作品の展示がございます
日本郵船歴史博物館 横浜市中区海岸通3-9

開場時間

10:00-18:00
※10/2(金)、10/3(土)、10/8(木)、10/9(金)、10/10(土)は21:00まで開場
※会期最終日の10/11(日)は20:00まで開場

主催

横浜市、公益財団法人横浜市芸術文化振興財団、NHK、朝日新聞社、横浜トリエンナーレ組織委員会

お問い合わせ

ハローダイヤル 050-5541-8600 (8:00〜22:00)

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