田島美加 太宰府天満宮

アーティスト・田島美加 スペシャルインタビュー|太宰府天満宮アートプログラム

公開日

muto編集部

2006年から展開する太宰府天満宮アートプログラムの第11回目として、ニューヨーク在住のアーティスト、田島美加(ミカ・タジマ)の個展を開催。今回はテーマの「Appear」や太宰府天満宮への考察について本人にインタビューしました。

田島美加さんが「Appear」で表現したものとは?

田島美加(以下 田島) 太宰府天満宮での展覧会のためにエネルギーのことやテクノロジーのことについて考えていたので、作品は「帯電した物体」「高エネルギー状態」「遷移」「物質」といった概念に関連していて、瞑想する人間の主題と物体の物理との関係を表しています。それぞれの作品で音や光を記録していますが、それらを全てを捕らえることはできません。しかしそういった不完全さというものも作品に内包されていて、その不完全さが詩的な表現へとつながります。

私は現代のテクノロジーを使って作品を制作することが多くあります。例えば『センス・オブジェクト』では、クリスタルにエッチングをして記憶を残すという現代における最先端の技術を表現に使いました。このクリスタルは10億年以上アーカイブを残せるものですが、その中には2020年1年分の日本のTwitterデータが保存されています。

田島美加 太宰府天満宮 Sense Object

©Mika Tajima Courtesy of TARO NASU Dazaifu Tenmangu Collection Photo by Yasushi Ichikawa

Sense Object(センス・オブジェクト)
ナノ構造の光学ガラスでつくられたクリスタル彫刻には、ソーシャルメディアから収集、処理、スクラップされた1年分の人間の感情データのポートレートが組み込まれている。また、5次元の情報を記憶したクリスタルは、神秘性・構造性に置いて完璧なローズクォーツの台に安置した

太宰府に滞在して感じたことはありますか?

田島 私が滞在していたのは家を出るとすぐ森に入ることができる場所で、一歩歩くと全く違う世界が感じられる場所でした。現代的な生活と古くからある自然が1つなっている場所だったのでインスピレーションを得られることが日常だったと思います。

その体験から生まれたのが屋外に常設している『エコー』『ナルキッソス』。木も石も生き物にも神が存在するという大きな世界の枠組みの中で捉えられている神道は昔からあるものですが、今も人の心にあるものです。その古いものと新しいものという対比をこの作品では重ね合わせました。またこの作品は天満宮の森の中に設置していますが、ここは瞑想をする場所として人のためだけに存在しているもので、テクノロジーに囚われがちな日常の逆転を狙っています。

田島美加 太宰府天満宮 Echo Narcissus

©Mika Tajima Courtesy of TARO NASU Dazaifu Tenmangu Collection Photo by Yasushi Ichikawa

Echo(エコー)/ Narcissus(Dazaifu)(ナルキッソス(太宰府))
宝物殿から徒歩5〜10分ほどの場所に設置された作品。※ブラックライト点灯時間 9:00〜19:30

田島美加 ミカ・タジマ ポートレート

田島美加 / Mika Tajima
1975年ロサンゼルス生まれ
現在はニューヨークにて制作活動中
彫刻、建築、音楽、パフォーマンスなど多様な要素を組み合わせた作品で知られる。日本では2013年に森美術館(東京)の「六本木クロッシング 2013:アウト・オブ・ダウト」展に参加、モダニズム建築の巨匠コルビュジエの作品を自身の作品と組み合わせたインスタレーション等で高い評価を得る

太宰府天満宮アートプログラムとは?
「文化の神様」である菅原道真公をご祭神としてお祀りしている太宰府天満宮は、人々が行き交い集う場としての「開放性」と、1,100年以上昔から変わらない天神信仰の場としての「固有性」という2つの性質を併せ持っています。この2つのキーワードをテーマに掲げ、2006年より行っているのが「太宰府天満宮アートプログラム」です。さまざまな分野において第一線で活躍中のアーティストを招き、太宰府での取材や滞在を経て制作された作品の公開を全面的にサポートすると同時に、これらの作品を地域の財産として収蔵することで、文化活動を牽引していく役割を担っています。太宰府天満宮ならではの「開放性」「固有性」と、それぞれのアーティストが持つそれらが重なり合うことで、アーティストの視点を通した新しい太宰府や太宰府天満宮の一面が映し出されます。
これらは新たな文化や歴史として、ここ太宰府の地から世界へ、そして未来へ向けて発信されていきます。

Information

イベント名

太宰府天満宮アートプログラム vol.11
田島美加 「Appear」

開催期間

10月10日(月・祝)まで
※7/25・9/19・10/10 を除く月曜休館

開館時間

9:00~ 16:30(入館は16:00まで)

観覧料

一般500(400)円・高大生 200(100)円・小中生100(50)円
※( )内は 30名以上の団体料金、障害者手帳提示により付添者1名まで半額料金

会場

太宰府天満宮宝物殿および境内(福岡県太宰府市宰府4-7-1)

主催

太宰府天満宮

協力

TARO NASU

展示監修

スーパーファクトリー

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