カリスマ・黒沢清監督が初めて撮り上げたフランス映画[spotlight page 1]

ホラーでいてヒューマンドラマ、ジャンルも、生死も、国境も超えた、まぎれもない黒沢印の新たな傑作が誕生した。

世界中に熱狂的な“キヨシスト”を持つカリスマ黒沢清監督が初めて撮り上げたフランス映画

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新作を撮るたびにカンヌ、ヴェネチア、ベルリンといった世界の名だたる映画祭に出品され、ヨーロッパを中心に世界中のシネフィルたちに圧倒的な評価を得ている映画監督・黒沢清。高校時代から自主映画制作を始め、立教大学でも映画サークルに所属するが、その間、世界的な映画批評家としても著名な蓮實重彦の講義を受講し強い影響を受ける。大学卒業後、長谷川和彦、相米慎二の助監督を務め、デビュー作は、今では伝説となったピンク映画『神田川淫乱戦争』。1997年の『CURE キュア』によって国際的に黒沢清の名前が一気に知られることになり、その後『アカルイミライ』、『ドッペルゲンガー』、『LOFT ロフト』、『叫』などを発表、特に2008年公開の『トウキョウソナタ』では、カンヌ国際映画祭「ある視点部門」審査員賞を受賞した。近年では、2015年のカンヌ国際映画祭「ある視点部門」で『岸辺の旅』が監督賞を受賞し、本年も『クリーピー 偽りの隣人』がベルリン国際映画祭に出品され、好評を博した。
その黒沢清監督がオールフランスロケ、外国人キャスト、全編フランス語のオリジナルストーリーで挑んだ初めての海外進出作品『ダゲレオタイプの女』(原題:La Femme de la Plaque Argentique)が完成し10月に東京を皮切りに公開される。監督以外はキャストも含めすべてが現地スタッフの中、撮影は行われた。
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物語は不穏な緊張感を持って始まる。ダゲレオタイプの写真家ステファンのアシスタントに偶然なったジャン。その撮影方法の不思議さに惹かれ、ダゲレオタイプのモデルを務めるステファンの娘マリーに恋心を募らせる。しかし、その撮影は「愛」だけではなく苦痛を伴うものだった……。主人公を演じるのはジャック・オディアール監督作品『預言者』でセザール賞の主演男優賞と有望若手男優賞をダブル受賞した実力派俳優、タハール・ラヒム。ジャンが恋心を抱くヒロインには『女っ気なし』で注目を集めた女優コンスタンス・ルソー。そして、ダルデンヌ兄弟作品で知られるオリヴィエ・グルメがダゲレオタイプの写真家ステファンの傲慢さと苦悩を体現し、さらにはマチュー・アマルリックが脇を固めている。

芸術と愛情を混同したアーティストである写真家のエゴイスティックさ、父を慕いながらも拘束され続ける撮影と家を離れ自らの人生をつかみたいマリーの想い、撮影に魅了されながらもただマリーとともに生きたいジャンの願い、そして、自ら命を絶っていたステファンの妻の幻影……これまでにないクラシカルで端正なホラー・ラブロマンスだ。

フランス映画とうたわれているが、「初めてフランスで映画を撮りました。日本と何か大きく違うことがあるんじゃないかと最初は心配しましたが、杞憂でした。映画はやはり世界共通言語のようです」と述べた後、「無国籍なただの映画として観てほしい」と監督自身は語る。しかし、無国籍というより、現代を代表する普遍的な作品を撮ることのできる世界的にも数少ない映画監督の一人が撮ったまぎれもない一級の映画作品と言いたいところだ。

冒頭の列車が駅へ滑り込んで、主人公が画面に現れるまでの息を呑むような完璧な構図、まるで映画の主人公のひとりとも思えるほどにこだわり抜いたロケーション、不穏さを漂わせる空気さえ映し込んだような画面……。ホラーでいてヒューマンドラマ、ジャンルも、生死も、国境も超えた、まぎれもない黒沢印の新たな傑作が誕生した。
INFORMATION
(C)FILM-IN-EVOLUTION -LES PRODUCTIONS BALTHAZAR -FRAKAS PRODUCTIONS –LFDLPA Japan Film Partners -ARTE France Cinéma

『タゲレオタイプの女』(原題:La Femme de la Plaque Argentique)

監督:黒沢清/脚本:黒沢清/撮影:アレクシ・カヴィルシーヌ/編集:ヴェロニク・ランジュ/音楽:グレゴワール・エッツェル/出演:タハール・ラヒム、コンスタンス・ルソー、オリヴィエ・グルメ、マチュー・アマルリック、マリック・ジディ
公開日:11月19日(土)
劇場:KBCシネマ
アドレス:http://www.bitters.co.jp/dagereo/

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