「2020年 笑っているのは誰?+?=??」@ナムジュン・パイク 展[spotlight page 1]

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撮影:岡倉禎志

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撮影:岡倉禎志

PS.
もし2020年に中国のGNPがアメリカを抜いて世界一になったとしよう。
内戦がなければ人口が5対1だから不可能ではないだろうー。
その時、墓場でニタニタ笑っている人が一人いる筈…彼の名は?

上記の言葉は、ビデオアートの父と呼ばれ2006年に亡くなったナムジュン・パイク(1932〜2006)が、1993年に東京のワタリウム美術館のカタログに寄稿したものだ。

そのナムジュン・パイクの没後10年を記念した大規模な展覧会「没後10年 ナムジュン・パイク展 2020年 笑っているのは誰?+?=??」が、東京神宮前にあるワタリウム美術館で開催されている。

テレビやビデオを用いたパフォーマンス、インスタレーション作品を数多く残したナムジュン・パイクは、ソウルの裕福な家庭に生まれ、朝鮮戦争勃発に伴い日本に逃れ東京大学に入学する。卒論『アーノルト・シェーンベルク研究』にて東京大学文学部美学美術史学科を卒業後、現代音楽を学ぶべくドイツに渡る。現地では、シュトックハウゼンやジョン・ケージらと出会い、禅をテーマとしたアヴァンギャルド作品を多数発表し課題となる。1962年には国際的な芸術運動フルクサスに参加。翌年に世界初のビデオアート作品を発表すると、テレビを使ったアートの可能性を探るべく、当時モノクロ1チャンネルの放送しかなかった西ドイツを離れ、カラーテレビ放送の始まっていた日本へと再来日する。そこで当時TBSに勤めていたエンジニアの阿部修也と共にビデオシンセサイザーの開発・研究を行い世界初のアートロボット『K-456』を共同製作する。その後は、ブラウン管の走査線を強力なマグネットで歪めた『マグネットTV』(1965)、後のミュージックビデオに多大な影響を与えたといわれるビデオアート作品『グローバル・グルーヴ』(1973)など作品を多数製作。さらに1974年には現在のインターネットの原型となる『エレクトロニック・スーパーハイウェイ』を構想する。1984年1月1日には、衛星技術を用いて世界中で同時発生するパフォーマンスを同時配信するサテライト・アート作品『グッド・モーニング、ミスター・オーウェル』を発表、この作品は、全体主義国家によって分割統治された近未来のディストピアを描いた小説『1984』の著者ジョージ・オーウェルへの返答となっている。
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X氏のハート / 1976-82 / キャンバスにエナメル・ペイント / 木枠 / 90×60cm

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ケージの森 / 森の啓示 / 1993 / 554×465×800cm
撮影:岡倉禎志

パイクは、一貫して情報を扱うアーティストだった。情報をいかにアートに変換するかを考え続けた。パイクが行ったテレビというメディアを使って国境を越えて人々を繋ぐという試みは、まさに現代のインターネット時代を先取りしていたといえる。
今展示は、ワタリウム美術館のコレクションより、パイクが最も活躍した70年代から90年代のインスタレーション、ビデオ、ペインティング、ドローイング等230点を通じて、芸術家パイクの全貌を明らかにする壮大な試みだ。
そして最後に、ナムジュン・パイクの作品としては国内最大級の大きさを持つ作品をいつでも福岡で見ることができることを記しておこう。
場所は、博多地区の商業施設キャナルシティ博多、正面入り口から入り見上げると、この施設のオープン以来20年間変わることなく、縦10台、横18台のTVモニターがずらりと並び映像を映している。作品の名は、《Fuku/Luck, Fuku=Luck, Matrix》。この作品は、はかなくもけっして消えることのない芸術の営みへの賛歌のように無音の明暗を繰り返している。
イベント情報
イベント名没後10年 ナムジュン・パイク 展「2020年 笑っているのは誰?+?=??」
会期《前半》10月10日(月・祝)まで
《後半》2016年10月15日(土)~2017年1月29日(日)
開館時間11:00〜19:00(毎週水曜日は21:00まで延長)
休館日月曜日(9/19、10/10、12/5・12・19・26、1/9は開館)、10/11〜10/14と12/31〜1/3は休館
会場ワタリウム美術館(東京都渋谷区神宮前3・7・6)
連絡先03-3402-3001(ワタリウム美術館)
アドレスhttp://www.watarium.co.jp

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