no16 Music is alive : 音楽は生き物

その場の空気、奏者の緊張感、観客のテンションで音楽は常に変化する。
だからこそ音の世界への旅は、いつもスリリングでエキサイティング。

Music is alive : 音楽は生き物[feature page 1]

interview:ジャズピアニスト/小曽根 真

JAZZは生き様そのもの。その人の過ごしてきた時間がすべてステージに出る。

原動力は「好き」という気持ちだけ。自分の感性を磨くことで成長してきた。

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私のピアノは我流なんです。独学と言うと「すごい!」と思われそうですが、「好きこそものの上手なれ」という言葉がありますよね。それぞれのジャンルである程度のところまで極めている人というのは、みんな同じことを言うと思うんです。「結局好きなことをやってきただけなんだ」と。コンクールなんかに出ると順位を付けられたり評価されたりしますが、そんなことは長い人生の中ではとてもちっちゃいこと。写真でも音楽でも文章でも何でもいいから、自分が本当に好きだというものを見つけることが大事。そして、ごまかせないのは自分の感性。自分の感性を磨いていくことでしか人間として成長する方法はない。僕が音楽を奏でることによって、コンサートの間はお客さんたちが日常の面倒くさい数字やポジション、権力、理不尽な世界から解放されて、心を豊かにすることにつながって欲しいと思っています。ただ、絵、文学、芝居、彫刻、音楽…アートと呼ばれるものは決して高尚ではない。これは口を酸っぱくして言いたいですね。生きていくために肉体が一番必要なものが食事であるなら、心が必要なものは芸術なんです。

音楽家チック・コリア、その魅力は“聞き上手”な演奏。

今回共演するチックと出会ったのはもう30年ぐらい前ですね。親しくなったのは僕が結婚してからで、東京の「パルテノン多摩」で彼が屋外コンサートをやった時に僕を呼んでくれて。彼は僕にとって本当にビッグブラザーですね、兄貴のような存在。いつも会って話を聞いてもらったり、公私共にアドバイスをしてくれる。とにかくクリエイターですね。ず〜っとモノを作り続けている人です。こんなミュージシャンは今までの歴史の中でいなかったんじゃないかなぁ。強いて言えばモーツァルトのような人で。モーツァルトは35歳で死んじゃったけど、チックは75歳でまだ創り続けている。「アクロス福岡」というホールは大きいですけど、その空間をそれこそチックのスピリットだけでバーンと包んでくれるような、そんな人です。すごく自由です。だからとても魅力的な人だと思いますね。
チックとのデュオが楽しいというのは、あんなに音楽での”聞き上手“な人はいないという点です。返ってくるピアノでの相槌に唸ってしまうんです。僕が演奏するでしょ? それで彼を見ていると「あ! それは気が付かなかった!」という伴奏が返ってくる。だから楽しいんです。こんなレベルの音楽の会話があるんだってことをお客さんには見てほしい。

JAZZも人間のコミュニケーション。だから、誰でも楽しめる。

JAZZの一番の醍醐味というのは、ずばり即興演奏。ステージに出てくる僕とチックが、「今日はどこからスタートする?」というように互いの目を見て、「どう行く? どっちから行く?」というところから始まるんです。特にチックという人は、ここまで来ると神業、というような即興をするんですね。この神業って何かと言うと技術じゃないんですよ。自由度なんです。たとえば、朝、会社に出勤して、座って目も見ないで同僚と「昨日さー」みたいな話しますよね。そんな感じなんですよ。それってなんの作為もないでしょう? 要するにJAZZも人間のコミュニケーションなんです。皆さんは人間で、生きている以上は誰しもそれをやっているんですよ。それをそのまんま音楽で表現できるのがチック・コリア。役者だったら台詞がありますけど、どれだけリアルに芝居をするかというのは人間を知っていないとできない。「この台詞をどう言うか」なんて人はもうアウトですよね。生きているってことは、次の瞬間なにが起こるかわからない。チックにとって、楽器を弾くということと生きることは分離していないんです。
二人の人間がステージに出てきて、口を使わずに、声を使わずに、ピアノから出てくる音楽という言語で会話をします。本当にどこに行くのかわからないですよ。「この曲やろう」と言ってリハーサルはしますが、リハーサル通りには絶対にスタートしない(笑)。その時に「え!? リハーサルと違うやん!」なんて人にはJAZZはできないんですよ。JAZZって生きていることや日常生活と同じで、ライヴそのものだから。どれだけ練習して、どれだけの音楽をやって、どれだけ人前で恥をかいてきたかとか、その人の過ごしてきた時間がすべてステージに出てくるわけです。きっと皆さんは「言葉はわからないのに会話の内容はわかる」というような不思議な国に連れて行かれた感じがするんじゃないかな〜と思いますよ。だから、「JAZZがわからない」と言っている人にこそ来てほしい。みんな普通に毎日生きている感性さえあれば、JAZZというのは楽しめると思うんです。絶対そう。「さあ、今日は何が起こるの?」というワクワク感が出てくると、クラシックのコンサートにもっとお客さんが増えるんじゃないかな。僕もたいがい「自分のコンサートには来てください」と言うけど、「これだけは来てください」と言うくらいの価値があります。
pick up event
イベント名ピアノ・デュオ プレイズ・アコースティック
詳細小曽根真氏に多大な影響を与えた存在の一人でジャズ・ピアニストの大御所チック・コリア氏が、出逢って30余年の年月を経て、日本初の全国デュオ・ツアーを実現。今回は二人が奏でるピアノの純粋な音色を、最大限に活かすアコースティック(生音)演奏で楽しむことができる。
出演チック・コリア&小曽根真
公演日時5月29日(日) / 15:00開演
会場アクロス福岡シンフォニーホール
料金S席:¥12,000 / A席:¥10,500 / B席:¥9,000 / 学生席:¥5,000(学生席の取り扱いはアクロス福岡とヨランダオフィスのみ)
お問い合わせヨランダオフィス・チケットセンター
0570-033-337(ナビダイヤル)
092-406-1771

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