爽やかな秋風に誘2枚のアルバム、「声」と「歌」について。[spotlight page 1]

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声は力だ。
人の心をつかみ虜にする「声」というものがある。例えば歴史に名を残した政治家の演説は、時に人々を陶酔と熱狂に駆り立て、スクリーンを飾った映画スターは、その容姿や演技力だけではなく、劇中のささやきひとつで観客を魅了したはずだ。
歌姫と呼ばれる歌手も例外ではないだろう。マリア・カラスやシュワルツコップは、アリア1曲で観衆を歓喜の渦に巻き込み、ビリー・ホリデイやフィッツジェラルドは熟した果実からこぼれ落ちる甘い汁のような歌声でどれだけの人々を覚醒へと導いたことだろう。

元ピチカートファイブの小西康陽がプロデュースし、片岡義男がエッセイを寄せた、八代亜紀が歌うジャズアルバムが話題になっている。驚くべきは八代亜紀の歌声。その歌唱技術は、演歌歌手とかポップシンガーといったカテゴリーを超えた驚愕のテクニック。(発声される音ひとつひとつに、かけられる精密で変幻自在な強弱を含んだビブラート!)
収録されているのは「夜のアルバム」と題されたスタンダード(流行歌)の数々。部屋の明かりを消し、ただひたすらに声と向き合うために作られた大人の歌曲集。ストイックに抑えた小西康陽のアレンジによるアンサンブルの上を八代亜紀は、気ままに浮遊しながら深く濃い夜へと聴くものを導く。
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一方、シャンソンをテーマに12曲の「歌」を披露しているのは小泉今日子。このアルバムでまず目を惹くのは、SOIL&”PIMP”SESSIONS、菊地成孔、小西康陽、川辺ヒロシ、二階堂和美など、制作陣の豪華な顔ぶれ。
タイトルは「コイズミシャンソニエ」。あくまで小泉今日子を主人公にして書かれ選ばれた楽曲を、本人が自ら演じ歌うという内容。やはりシャンソンといえば、恋、別れ、孤独など、悲哀を漂わせながら歌われるものだという常識的なイメージがある。(本来、シャンソンとは「歌」全般のことを指すという意味以外にはないのだそうだが)
よってシャンソンの歌い手は、淋しげなたたずまいをまき散らしながら、それでいて豊かな人生を歩んできた人でなければならない。人生の酸いも甘いも知り尽くし大人になった小泉今日子。まさにシャンソン的世界?
いや、そんなに深刻にならなくても、一人の魅力溢れる女性の人生の断面を、ライトな映画でも観るように気楽に楽しめばいい。秀作揃いの楽曲の数々が心地良いそんなアルバムだ。
ちなみに初回限定版の特典として、小泉今日子のヒット曲をスタイリッシュにリミックスした田中和之(FPM)監修のボーナスディスクも必聴。
INFORMATION
八代亜紀「夜のアルバム」SONGS AROUND MIDNIGHT
SHM-CD:UCCJ-2105、レーベル:EMARCY、発売元:ユニバーサルミュージック
小泉今日子「Koizumi Chansonnier」
限定盤:VIZL-499、通常盤:VICL-63932、発売元:Victor

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