驚愕の映画が生誕した。[spotlight page 1]

モラルの崩壊、人間の愚行への深刻な問い。

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重厚で思慮深い多くの名作が映画史の中に存在するロシア映画。濃密な歴史と広大な土地をもつロシアの地とは、人間が精神の奥深くへと向かわざるを得ない何かを宿し続ける土地なのだろうか?世界中のシネフィルを引きつけてきたそんなロシア映画に、またひとつ、超のつく問題作が加わった。アレクセイ・ゲルマン監督の「神々のたそがれ(原題=HARD TO BE GOD)」。
原作は、ストガルツキー兄弟のベストセラー小説「神様はつらい」。
舞台は、とある惑星の都市アルカナル。
この惑星は、地球から800年ほど遅れた発展を遂げており、今まさに中世ルネッサンス期を迎えているような時代。
そこに目を付けた地球人たちは、科学者・歴史家らの調査団を派遣した。しかし、最初の潜入から20年が経過してもそこで繰り広げられているのは、圧政、殺戮、知的財産の抹殺であり、文化発展の兆しは全く見られない。そんな世界で地球人の一人、ドン・ルマータは、未来から知識と力を持って現れた神のごとき存在として惑星の人々から崇められていた。しかし、この地球人が政治に介入することは許されず、ただ権力者たちによって繰り広げられる蛮行を傍観するのみであった・・・。

ゲルマン監督が本作の撮影に着手したのは、映画化の構想を立ててから実に約 35年後にあたる2000年のことだった。架空の惑星都市アルカナルのありとあらゆる場面が監督の手によるドローイングやスケッチに基づいて作り上げられた。 監督自身の確認を経ずに作られた要素は一つもないという。屋外場面の主要部分は、古い城がたくさん残っているチェコ共和国で撮影され、部分的にロシアのサンクトペテルブルクでも撮影された。舞台装置はレンフィルム・スタジオで設計され、数えきれない部屋、けた外れに長い廊下、小路や広間の数々、二階建てのアパート群──。

すべての素材を撮り終えたのは2006年。6年間におよぶ撮影期間中、老齢の俳優のなかには亡くなってしまった者もいたという。さらに 編集に、約5年の歳月を要し、その後の追加撮影中に、ゲルマン監督の健康状態が悪化し始めた。入退院を繰り返しながら続く、撮影、編集、アフレコ。そして、製作が最終段階に入っていた2013年2月21日にゲルマン監督は亡くなった。しかしこの時点で、映画はほとんど完成しており、最後のミキシング作業を息子のアレクセイ・ゲルマン・ジュニアか仕上げたという。映画評論家の蓮實重彦は「傑作の概念をはるかに越えた途方もない作品」だと語り、フランスの哲学者ウンベルト・エーコは「アレクセイ・ゲルマンに比べれば、タランティーノはただのディズニー映画だ」といい放つ。177分間を埋め尽くす人間の愚行とその果ての彼岸を巡るとてつもない映画が誕生した。
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「神々のたそがれ」
・ 監督:アレクセイ・ゲルマン
・ 脚本:アレクセイ・ゲルマン/スヴェトラーナ・カルマリータ
・ 原作:ストルガツキー兄弟 「神様はつらい」
・ 撮影:ウラジーミル・イリイン/ユーリー・クリメンコ
・ 音楽:ヴィクトル・レーベデフ
・ 制作会社:Studio Sever (Russia), Russia 1 TV Channel (Russia)
・ 製作年:2013
・ 製作国:ロシア
・ 本編尺:177分
・撮影:35mm
・上映:DCP

福岡KBC シネマで公開予定

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